2003 Fiscal Year Annual Research Report
『詩経』および出土史料による先秦時代の婚姻・家族研究
Project/Area Number |
03J10264
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小寺 敦 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 上海博楚簡 / 詩経 / 感生伝説 / 出土資料 / 戦国王権 / 子羔 / 楚地域 |
Research Abstract |
本年度はまず「2002年の歴史学界-回顧と展望-東アジア(中国-殷・周・春秋)」において、出土史料研究が活況を呈する現状をやや批判的に回顧しつつ、2002年度における殷・周・春秋史の研究動向をまとめた。それから本年度が始まるに先立ち、馬承源主編『上海博物館藏戰國楚竹書』(二)(上海古籍出版社、2002年12月)が出版されたが、この上海博楚簡という出土史料には『詩』の引用文や『詩』の内容と共通する文が豊富に含まれており、中国古代史のみならず『詩』研究においても現在緊急に検討すべき重要史料である。そのため本年度は、上海博楚簡(第2巻)研究会に参加し、そこで訳注を担当することとなった『子羔』篇をはじめとする上海博楚簡の研究を最優先課題とし、『毛伝』は上海博楚簡との関わりの上で議論していくことになった。上記研究会における直接の成果が「上海博楚簡『子羔』篇譯注」である。『上海博物館藏戰國楚竹書』(二)掲載の竹簡写真版から文字を起こしつつ、インターネットを始めとして日々発表され続ける各国・各地域の研究を参照しながら、それらの是非を比較検討し、感生伝説に関わる『詩』諸篇→『子羔』→感生伝説に関わる『楚辞』諸篇→『史記』感生伝説の材料という史料の成立過程を考えた。更に別の場でも発表の機会を与えられ、上海博「上海博楚簡『子羔』の感生傳説について-戰國時代の楚地域における『詩』受容の視點から-」を公表することができた。そこでは『子羔』の感生傳説に対象を絞り、『詩』と共通する内容を有する感生伝説が戦国時代後期ごろの楚地域に存在した背景には、戦国王権と関係する一種の政治力が存在した可能性があり、『詩』の楚地域への傳播についても、戦国王権による政治性を考慮に入れる必要があるだろうと考えた。また上記研究と関連して中国社会科学院歴史所などを訪問し、史料収集および現地研究者との交流を行った。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 小寺 敦: "2002年の歴史学界-回顧と展望-東アジア(中国-殷・周・春秋)"史学雑誌. 112-5. 197-203 (2003)
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[Publications] 小寺 敦: "上海博楚簡『子羔』の感生傳説について-戰國時代の楚地域における『詩』受容の視點から-"史料批判研究. 6. 46-71 (2004)
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[Publications] 小寺 敦: "上海博楚簡『子羔』篇譯注"新出土文献と秦楚文化. 1(印刷中). (2004)