2003 Fiscal Year Annual Research Report
ジシアノ鉄フタロシアニンを用いた、機能性有機薄膜・有機結晶の作製とその物性研究
Project/Area Number |
03J10522
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 真生 東京大学, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | フタロシアニン / 分子性導体 / π-d系 / 巨大磁気抵抗 / 有機薄膜素子 / 光応答性 |
Research Abstract |
[Fe(Pc)(CN)_2]ユニットを用いた薄膜に関しては、カウンターカチオンを[(n-C_7H_<15>)_4N]^+、溶媒をアセトンを用いることで素子作製に耐え得るものの作製に成功した。この薄膜を用いて光伝導度の実験を行ったところ、光照射によって電流値が3桁も上昇する現象が観測された(光応答性)。この応答性は紫外光にのみ観測された。[Fe(Pc)(CN)_2]ユニットは紫外領域にMLCTバンドとLMCTバンドを持っていることから、紫外光の照射によって伝導キャリアとなるホールや電子が生成されたと考えられ、この分子ユニットを用いた素子作製という本研究の有用性をよく表わす結果が得られている。 [Fe(Pc)(CN)_2]からなる機能性結晶に関しては、[PXX][Fe(Pc)(CN)_2]を作成しその種々の物性測定を行った。既に得られていたTPP[Fe(Pc)(CN)_2]_2と(PTMA)_x[Fe(Pc)(CN)_2]y(CH_3CN)の結晶とあわせて磁気抵抗を測定することで、[Fe(Pc)(CN)_2]ユニットの持つ磁気異方性が全ての結晶における磁気抵抗の異方性を決定していることが分かり、これも[Fe(Pc)(CN)_2]ユニットが機能性材料の構成成分として有用であることを支持する結果である。 また、非磁性金属Co^<III>を含んだ混晶TPP[Fe^<III>_<1-x>(Pc)(CN)_2]_2の作製も行った。xの価が小さくなるにつれて局在モーメント間の平均距離は大きくなり、磁気的な相互作用は小さくなると思われる。数種の混晶で磁気物性の測定を行ったところ、この予想を支持する様に、xの価が小さくなるにつれて弱強磁性への転移温度が減少した。この系における局在モーメント間の相互作用は伝導電子を介したものであることから、今回得られた結果はRKKY相互作用によって説明できると考えている。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 松田真生: "Structure and Physical Properties of Low-Dimensional Molecular Conducors [PXX][Fe^<III>(Pc)(CN)_2] and [PXX][Co^<III>(Pc)(CN)_2] (PXX = peri-xanthenoxanthene, and Pc = phtalocyaninato)"Bulletin of the Chemical Society of Japan. 76. 1935-1940 (2003)
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[Publications] 松田真生: "Fabrication of Thin Films Using a Soluble Metal Phthalocyanine Salt and Their Photoconductive Properties"Chemistry Letters. 32. 130-131 (2003)
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[Publications] 松田真生: "Magnetic Properties of d-π Conducting System, TPP [Fe^<III>_xCo^<III>_<1-x>(Pc)(CN)_2]_2"Synthetic Metals. 135-136. 635-636 (2003)
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[Publications] 松田真生: "Molecular unit based on metal phthalocyanie ; Designed for molecular electronics"Journal de Physique IV. (発売予定).