2003 Fiscal Year Annual Research Report
成長ホルモンパルスを介した中枢性代謝制御機構に関する研究
Project/Area Number |
03J11358
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
米澤 智洋 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 成長ホルモン / パルス / 性周期 / エストロゲン / プロゲステロン / シバヤギ / IGF-I |
Research Abstract |
背景と目的 成長ホルモン(GH)はパルス状に分泌されており、そのパルスパターンが糖脂質代謝や摂食行動を調節している。そのため、GHのパルス形成機構の解明は、生活習慣病や家畜の肥育戦略に有益な情報となると考えられる。 そこで本研究では、複数のホルモンを同時に観察できるシバヤギを実験動物として用い、GHパルスの形成機構の解明とともに、GHパルスによる代謝・摂食行動の調節機構を解明することを目的とした。本年度は、雌ヤギのGHパルスパターンの性周期変動と、その性ステロイドとの関連について追究した。 材料と方法 成熟シバヤギの無処置雌、卵巣摘除雌(OVX)、性ステロイド処置したOVXの実験区をもうけ、摂食行動・血中のGH、インスリン様成長因子(IGF-I)、エストロゲン、プロゲステロン濃度を24時間測定した。 結果と考察 OVXでは、5時間ごとの規則的なGHパルスが観察された。無処置雌ヤギにおいては、初期黄体期ではOVXのGH分泌動態と酷似していたが、血中プロゲステロン濃度の高い中・後期黄体期ではGHパルスの数、振幅の有意な減少がみられ、逆に血中エストロゲン濃度の高い発情期ではパルスの数、振幅の有意な増加がみられた。また、性周期中の血中IGF-I濃度は、発情期に有意に上昇した。一方、エストロゲン処置したOVXでは、GHパルス振幅の著しい上昇がみられ、プロゲステロン処置したOVXでは、GHパルス振幅の減少がみられた。 以上の結果から、雌シバヤギにおいて、GHのパルスパターンは性周期にともなって変動することが示された。このパルスパターンの性周期変動は血中IGF-I濃度に反映されていた。また、エストロゲンはGHパルスの振幅を亢進し、プロゲステロンはGHパルスの振幅を減少させることが示唆された。本研究で示された性ステロイドによるGHパルスパターンの変動やそれに伴うIGF-I濃度の変動は、発情行動や妊娠の準備といった繁殖活動のステージの変化に対応する糖脂質代謝の制御機構のひとつであると考えられる。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Mogi K, Yonezawa T, Chen DS, Li JY, Sawasaki T, Nishihara M.: "Correlation between spontaneous feeding behavior and neuropeptide Y profile in the third ventricular cerebrospinal fluid of goats."Domestic Animal Endocrinology. 25・2. 175-182 (2003)