2003 Fiscal Year Annual Research Report
サンゴ年輪解析によるインド洋ダイポール変動の長期的復元
Project/Area Number |
03J11732
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯嶋 寛子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | サンゴ年輪 / ダイポール変動 / 放射性炭素 / 湧昇 |
Research Abstract |
本研究の目的は、造礁サンゴ骨格年輪の放射性炭素濃度(Δ^<14>C)、酸素同位体比などの分析により、西インド洋の過去数十〜百年の海洋環境-湧昇・海流、水温、降水量などを復元し、インド洋で起こる気候変動イベント「ダイポール変動」の特性を解析することである。 これまでの研究により、サンゴ骨格年輪中の放射性炭素濃度(Δ^<14>C)が中・深層水のミキシングの指標になるという結果が得られている。しかし、サンゴ骨格のΔ^<14>Cと報告されている周囲海域の海水のΔ^<14>Cが異なるなどの問題点が見つかり、サンゴ骨格のΔ^<14>C変動を用いて湧昇の強弱を定量的に見積もるまでには至っていない。そこで基礎的研究として、海水とサンゴのΔ^<14>Cの比較を行い、サンゴ骨格中の^<14>C変動を湧昇の指標として利用することの評価を行った。その結果、海水とサンゴ骨格のΔ^<14>Cには一定量の差がある可能性が指摘された。これらの結果は限られた時期にっいての比較であるため、今後、通年で海水を採取して比較するなど、更なる実験が必要である。 さらに、湧昇の指標としてMn、Baが利用できることが報告されており、これらの変動とΔ^<14>C変動との比較をすることで、湧昇変動をより正確に復元できると考えた。そこで、LA-ICP-MSとPIXEによるMn、Baの測定の可能性について、予察的に分析を行い、評価した。これらの方法は、試料を破壊せずに高時間分解能での測定が可能であるため、非常に有効である。その結果、PIXEによる分析では変動を復元するのに十分な精度と時間分解能が得られなかつたが、LA-ICP-MSを用いれば、湧昇変動の復元に十分な測定が可能であることを確認した。 また、上記の基礎的・予察的研究の他に、分析試料め選定および前処理作業を行った。X線写真を撮影し、百年程度の記録(年輪)を持つ試料であることを確認した。
|