2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J50961
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
星野 光樹 國學院大學, 神道文化学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 六人部是香 / 伴信友 / 日中神事記 / 天津祝詞 / 幽冥政 / 産霊 / 仁慈・誠忠 / 祭式 |
Research Abstract |
今年度は、近代における神社祭儀の成立について、国学者の思想・宗教観における神事の役割を検討することで、近代における復古的な祭儀が登場する背景を明らかにすることを試みた。この成果については、「六人部是香と神事について」(『神道宗教』193号、2004年1月号掲載予定)に所収されているので、以下概要を示すことにする。 本稿では幕末期に『神祭式』を著した国学者六人部是香に焦点をあて、復古的な祭式が如何なる思想的・宗教的課題によって登場するのかを考察する。 是香の研究については、「産須那社」を中心とした幽冥論の独自性に関する考察が目立つが、その学問の要因とされる祠官としての職掌について、神事や祈願といった問題と是香の思想との関連は十分に指摘されていない。 是香の産土社論は、師である平田篤胤のほか、伴信友の影響のもとに、祈願の内容に関わって、陰陽道や仏教との関わりを戒める一方で、産土社に正しく祈願することが説かれている。 こうした祈願を祀官の職掌とすることについて、是香は「天津祝詞」を奏上することを主張した。それは皇統の守護と作物の保護と共に、個々人の守護を内容とするものであり、このことは、幽冥政として産霊の働きを示す「産須那社」の解釈にも繋がっている。 「産須那社」に対する祈願の実践は、「仁慈」の実践と関わっている。「仁慈」とは、自他共に危難を救うことであると同時に、それが幽冥の神々の人間に対する働きかけとしている。このことは、個々人が「誠忠」に生活を営む事と、神々の働きは不可分であることを示しており、ここに個人の生活の中で、幽冥の神々の働きを祈る祠官の役割が出てくる。祭式次第書は、「仁慈」を実践する上で、「産須那神」などの幽冥政における働きが、正しい由緒を持つ神事の実践によって顕現することを示したものであったと思われる。
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Research Products
(1 results)