1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04451073
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
八木 充 山口大学, 人文学部, 教授 (90034694)
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Keywords | 長屋王宅 / 荒炭 / 長登銅山跡 / 木簡 / 調庸物付札 |
Research Abstract |
本研究の主目的は、古代木簡をその出土遺跡との一体的、総合的な検討によって、″遺物としての木簡″の史料価値を明確にし、そのより広い活用を試みることにある。本年度は、平城京・長岡京・長登銅山跡(山口県美東町)出土の木簡の考察をとおして遺跡の性格を追究した。 (1)平城京3条2坑から出土した厖大な木簡をめぐって、その一画に営まれた皇親の家宅と家令所が、天武天皇孫の長屋王のものであることを推定した。しかしより重要な結論は、この長屋王宅が、父高市皇子の飛鳥宅を継承し、その妃御名部内親王の居住によってこの地に造営されたとみられる点で、長屋王の母・妃・兄弟姉妹・子女という高市皇子家の家屋制的経営の実態を浮び上がらせることになった。同時に王家の人々の万葉作歌の文苑としての邸宅の所在地も明確にした。 (2)長岡宮域の東辺南端を西から東へ流れる基幹排水溝から出土した木簡のうち、「荒炭」を記する点は、宮内の太政官から宮外の出土地付近にあった太政官厨家にあてた荒炭請求木簡で、荒炭の用途は研磨用であった。太政官、とくに少納言局は宮印製造を管理したから、荒炭は宮印の仕上げ工程において印文の字形などの整形に使用したのではないかと推定した。 (3)長登銅山跡から75点の木簡が出土し、物品請求・製錬銅整理・焼炭供給・食料支給などの木簡が含まれる。とくに調庸物付札が発見され、一帯の〓銅・製錬施設が、奈良時代初期の官営銅生産施設であることが実証できた。あわせて、調庸物・力役が貢進・徴発地から直接長登へ調達された事実を明らかにした。 (4)藤原宮木簡については、とくにSD105出土の木簡写真を収集し、7世紀にかかるものと8世紀にかかるものとの分類の作業をはじめた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 八木 充: "奈良時代の銅生産" 日本史の研究. 157. 57-66 (1992)
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[Publications] 八木 充: "長岡京出土の荒炭木簡" 「長岡京故化論叢〓」三星出版. 289-298 (1992)
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[Publications] 八木 充: "長屋王家と万葉歌" 上代文学. 69. 1-18 (1992)
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[Publications] 八木 充: "木簡からみた長登銅山跡" 「長登銅山跡発掘調査報告書」美東町教育委員会. (1993)