2005 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアおよび西部北太平洋エアロゾル中の極性有機物に関する研究
Project/Area Number |
04F04327
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河村 公隆 北海道大学, 低温科学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WANG Gehui 北海道大学, 低温科学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | エアロゾル / 南京 / 有機物 / アルカン / 脂肪酸 / レボグルコサン / 化学燃料の燃焼 / 光化学反応生成物 |
Research Abstract |
中国の巨大都市では大気汚染が深刻であり、汚染大気エアロゾル粒子が関係した健康被害(ガンなど)が大きな社会問題となっている。本研究では、中国の15都市で採取したエアロゾル試料を分析し、各種有機物組成の夏と冬における分布を明らかにすることを目的とした。 以下に、今回の中国における都市観測で明らかになった有機エアロゾルの組成・濃度・起源の特徴を要約する。 1.炭化水素から含酸素有機物まで検出された有機化合物の濃度は、西安・重慶など中国中西部において10μm^<-3>を超える極めて高い値を示すことがわかった。このような高い濃度の有機エアロゾルはこれまでに欧米や日本では報告例がない。これらはPM2.5のエアロゾル質量の2-7%を占める。また、エアロゾル有機炭素の7-12%に相当する。 2.一般に、冬においては化石燃料の燃焼起源のn-アルカン、PAH、および、生物燃料の燃焼によって生成するレボグルコサンが高い濃度を示した。これは冬期における暖房など化石燃料使用量の増加とともに気象場の変化(逆転層の形成)が主な原因であると考えられる。 3.夏に顕著に増加する成分として、フタレートの存在が見つかった。この傾向は全ての都市において認められた。フタレートは可塑剤としてプラスチック製造に広く使われている物質であり(プラスチック中に数十%の割合で含まれている)、中国におけるプラスチック製品の使用が著しく高いことを示唆する。 4.ジカルボン酸類の濃度も夏に増加したが、地域は北部に限られていた。南部ではむしろ冬に濃度が高くなった。北部では、夏場における二次有機エアロゾルの生成が南部にくらべて相対的に大きいと考えられる。その理由として、北部では夏と冬の気温差が大きいことが考えられる。一方、南部では、冬期の化石燃料からのジカルボン酸の前駆体(揮発性有機物)の放出量の増大が光化学反応によるジカルボン酸の二次的生成に大きく寄与している可能性がある。南部においては、冬でも気温が十分に高くまた日射も強いため、冬期におけるジカルボン酸の二次的生成は北部にくらべてより強く起こっていると考えられる。
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