2004 Fiscal Year Annual Research Report
複雑な感覚運動システムにおける適応・予測的バランス制御へのゲシュタルト的アプローチ
Project/Area Number |
04F04413
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國吉 康夫 東京大学, 大学院・情報学環, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LUNGARELLA Massimiliano 東京大学, 大学院・情報学環, 外国人特別研究員
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Keywords | 身体性 / 発達 / 創発 / 受動ダイナミクス / 情報理論 / ゲシュタルトアプローチ / 複雑性 |
Research Abstract |
本プロジェクトの最終的な目的は、自律探索を通して脳・身体・環境の相互作用を利用する事が可能な人工システムの開発である。このような知能や知的な振る舞いの創発と発達、特に運動能力・技能の獲得のためには、脳・身体・環境の相互作用を定量的に理解する事が鍵になる。 「情報構造」の生成能力は身体性に基づく人工知能の根本原理となる。センサのチャンネル間やモータデータ間に存在する冗長性、センサ情報の次元圧縮性、情報の複雑性と統合性により定義される局所的特徴と大域的パターン(つまり、視覚におけるエッジと形)などに、情報構造が現れてくる事を実験により示した。 センサリ・モータデータの情報構造のより深い理解のため、単変量・多変量解析ツールをMatlabツールボックスとして構成し、これらの統計的手法が、ロボットにおける顕著性に基づく注意行動(saliency-based attentional behavior)にどのように応用できるかを例示し、さらに、身体が運動・行動してゆく過程で情報構造が生成される事を示した。 また、ロボット・有機体の形態を考慮する事は情報の構造化において非常に重要であり、身体機構のデザインや、素材の選定など、身体における適切な形態設計が擬似受動歩行の制御を容易にする事を示した。現在、これらの実験結果に基づき、ロボットの形態は運動生成機構へと伝達されたセンサデータに構造をもたらし、その効果・構造は情報理論により定量化可能であるとする仮説を立てている。 上述したいくつかの実験結果は情報理論的なアプローチの有効性を示唆する。そのため、最終的な統合システムとして、「バランス感覚」の創発システムを構築してゆく過程で、姿勢制御とバランス維持という問題を情報理論の観点から捉え直す。特に、ゲシュタルト的なアプローチに沿って、局所的に同期し、なおかつ大域的にも統合されているという性質を、ロボットの形態と運動制御機構に着目し、説明してゆく事を試みる。このようなアプローチによって、発達的ロボティクスのデザイン原理の導出が期待される。
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