2005 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸域の統合的管理と沿岸地域社会の多面的機能に関する研究
Project/Area Number |
04F04477
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山尾 政博 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SUANRATTANACHAI Phattareeya 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 総合的沿岸域管理 / 資源管理システム / 復興過程 / 有用資源 / 過剰漁獲 / 代替所得 / ツーリズム / 担い手 |
Research Abstract |
沿岸域の統合的な管理と持続的な資源利用を実現するために、地域はどのような社会経済システムを実現すべきかを明らかにするために、今年度は海外では2つの国で事例調査を行った。タイでは、アンダマン海側のクラビ県とパンガー県の3地域において、沿岸域資源の利用に関する実態調査と意向聞き取り調査を実施した。調査地は、1昨年12月のスマトラ沖地震で発生した津波による被害を受けたが、村落住民組織および行政が中心になっていち早く復興過程を歩み始めた。住民が長年にわたって作りあげてきた資源管理システムが再び機能し始めていた。フィリピンのパナイ島・バナテ地区において、零細漁民の資源利用実態について調査分析した。水産資源の季節変動とはかかわりなく、特定の有用魚種を対象に周年操業を行う零細漁民が多数いることが明らかになった。熱帯域の水産資源利用は"multi-gears, multi-species"というように表現されるが、調査地域では、特定の漁具・漁法を用いて有用資源を過剰に漁獲する零細漁家の経営が観察された。多種多用な資源を生かして、多面的な経済活動を営むためには、持続的な資源利用を可能にするシステム作りが欠かせない。同地域では地方分権・住民参加型の資源管理組織が設立され、違法漁業を取り締まるとともに、水産資源に過度に依存しないですむように代替所得の確保に努めている。タイとフィリピンの調査研究の成果の一部は学会で発表し、フィリピンでは調査地の住民に対して概要を報告した。その際、フィリピン大学ビサヤ校の教員の協力を得た。 日本では、広島県瀬戸内海の島嶼部漁村で主に漁場利用とツーリズムに関する聞き取り調査を行った。過疎化と高齢化に悩む日本の漁村では、様々な担い手たちが地域資源の多面的利用に活路をみいだそうと努力していることがわかった。
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