Research Abstract |
本研究の最終年度にあたる今年度は,東南アジア及び日本を始めとする東アジアの沿岸域資源管理および沿岸環境の持続的利用と保全にかかわって実施してきた調査の成果をまとめることを,研究の中心にすえた。申請者が所属する広島大学の食料資源経済学研究室では,地域農林水産資源の持続的な利用と農漁村開発にかかわる調査研究を進めており,特に,漁村の多面的機能,参加型資源管理の発展方向について,実証的に明らかにしようとしている。研究のとりまとめとして,次のような課題に取り組んだ。 第1は,フィリピンのパナイ島のバナテ湾での調査活動に参加してえた一次資料をもとに,零細漁民の操業状況と資源の利用実態について明らかにした。調査地域では,熱帯沿岸域では当然と思われていた多種類の漁具を用いて多彩な魚種を漁獲するという"multi-gears, multi-species"がそれほどみられず,特定漁具を用いて数種類の有用魚種だけを対象にした漁業操業が広くみられた。資源の季節変動も無視されがちである。他の分野の調査活動の成果を援用しながら,こうした漁業操業になる要因を分析した。第2は,インド洋津波で被災したタイのパンガー湾を中心に漁村の多面的機能について継続調査を行ってきたが,漁村復興過程で問題になっている資源の過剰利用を防ぎ,資源の持続的な利用ができるような枠組を地域がどう維持してきたかを明らかにした。第3は,東南アジアの沿岸域資源管理を担う機関について,フィリピンとタイについて,広島大学のスタッフおよび他の研究機関の研究者との共同調査を通じてその役割と組織について検討し,統合的沿岸域管理の実現に向けた政策のあり方を検討した。これらの研究成果の一部は,イギリスで開催された世界水産経済・貿易学会(IIFET)及び地域漁業経済学会で発表し,あわせて論文として投稿した。
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