2005 Fiscal Year Annual Research Report
アルコールによるウイルス性肝炎・肝がんの進展-感受性要因(PPARα遺伝子多型)に関する分子疫学研究
Project/Area Number |
04F04496
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
那須 民江 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEE Chul-ho 名古屋大学, 大学院医学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | PPARα / 遺伝子多型 / ALDH2 / 飲酒 / コレステロール代謝 / 民族差 / 健康診断 / 脂質代謝 |
Research Abstract |
申請者らはPPARα(ペルオキシゾーム増殖剤活性化受容体α)がアルコール性肝障害を制御していることを、PPARα-nullマウスを用いて明らかにした(Hepatology、2004)。即ち、アルコールを慢性投与した場合、野生型マウスは肝の脂肪化が観察されたのみで、肝炎、肝の繊維化は観察されなかったが、PPARα-nullマウスでは、脂肪化に加えて、肝炎、肝の繊維化が観察された。これはPPARα遺伝子多型がアルコールに関連した肝疾患の感受性要因となることを示唆する。一方、ウイルス性肝炎はアルコール摂取により進展が促進されることが知られている。この過程にPPARα遺伝子がどのように関わっているか明らかにする目的で、まず、健康集団を対象として、PPARα遺伝子の多型の頻度を調査し、脂質代謝との関連性を検討した。 某企業の健康診断の際に研究の説明をし、同意を得た706名を研究対象とした。一部の被験者は既往歴等のため除外し、655名をPPARαの遺伝子多型と健康診断データとの関連性の解析の対照者とした。 健康な日本人男性に観察された主なPPARαの遺伝子多型はV227Aであり、その頻度は0.05であった。その他D140N、G395E多型も観察されたが、その頻度は0.01未満であった。欧米人で観察されたL192V多型は日本人では観察されなかった。これらの結果はPPARαの遺伝子多型には民族差が認められることを示す。 健康診断データとの比較により、非飲酒群のV227A群のコレステロール値(TC)は野生型群より有意に低かったが、飲酒群では差は認められなかった。これは多型群においてはTCの代謝が活性が野生型群より高いが、飲酒によりその活性が抑制されることを示唆する。 さらにこれらのデータをALDH2遺伝子多型との関連において解析した。非飲酒者において、ALDH2多型群でかつPPARα遺伝子多型群のTCは野生型群より低い傾向にあったが、飲酒群では逆転していた。しかしALDH2野生型群にはこのような現象は見られなかった。これらの結果はPPARα遺伝子多型群のTC代謝活性は高く、飲酒によってその活性が抑制される現象は特にALDH2多型群において観察されることを示す。
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Research Products
(1 results)