2004 Fiscal Year Annual Research Report
キラリティーを自発的に発現させる化学システムの開発及びそのメカニズムの解析
Project/Area Number |
04F04804
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Research Institution | Keio University |
Host Researcher |
朝倉 浩一 慶應義塾大学, 理工学部, 助教授
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Foreign Research Fellow |
PLASSON Raphael 慶應義塾大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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Keywords | ホモキラル / アミノ酸 / ポリペプチド / 重合 / 非線形動力学モデル / シミュレーション / 結晶化 / 分岐 |
Research Abstract |
本外国人特別研究員らは、1)アミノ酸の活性化(NCA化)、2)活性型アミノ酸の加水分解による失活、3)アミノ酸のラセミ化、4)ポリペプチドのエピメリ化、5)活性型アミノ酸の重合によるポリペプチドの生成、6)ポリペプチドの加水分解によるアミノ酸の生成の6段階からなる化学系において、外部環境との物質の交換はなくても、エネルギーの流入があり化学系を構成する物質がリサイクルされるならば、ゆらぎが成長して自発的にホモキラルな状態が出現することを、これまでにモデルを提案して証明してきた。本研究の目的は、このモデルに基づいて、実際にラセミ的環境からホモキラルなポリペプチドを生成させることであるが、来日が11月下旬、本補助金の内定が12月であったため、コンピューターシミュレーションによるより好ましい実験条件の絞込みは行なったものの、化学実験に関してはその準備、すなわち使用するアミノ酸であるバリン及びそのオリゴマーの鏡像異性体及びジアステレオ異性体を、高速液体クロマトグラフィーにより分離する条件の調査のみしか行なえなかった。 ただ、重合によるポリマーの生成とその分解によるモノマーの生成という一対の反応は、過飽和あるいは過冷却状態におけるクラスターの生成と崩壊が同時に進行するプロセスと類似している。そこで、本受入研究者が検討を行なってきた1,1'-ビナフチルの過冷却融液中からの結晶化系について、これまでに培われたコンピューターシミュレーションの技術を適用することで、以前よりも複雑な非線形動力学モデルによる検討が可能となった。その結果、従来は無視してきた比較的遅い過程をモデルに取り込むことで、分岐挙動が顕著に異なってくることが見出された。
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