2004 Fiscal Year Annual Research Report
近代王権表象の歴史・比較社会学的研究-近代日本のマスメディアを事例として-
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04J00120
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
右田 裕規 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | マスメディア / 天皇制 / 進化論 / 女性 |
Research Abstract |
マスメディアが近代国民国家において政治権力といかなる関係をもち、ナショナリズムの成長にいかなる機能を果たしたかについて論じた理論的・経験的研究の精読をつうじて、本研究における適切な理論的枠組みの検討を進めた。 それとともに、本研究に関連する経験的資料の収集・読解作業を行なった。調査の中心となったのは、京都大学の附属図書館の所蔵する、近代日本の主要な新聞8紙による皇室関連の報道である。また、国立国会図書館・お茶の水図書館にも適宜出張し、補完的な文献・史料収集を実施した。 より具体的な研究実績としては、近代日本の皇室報道と民衆によるその受容形態の通時的変容にかんし、基礎的・実証的研究を行なった。とくに中心的な研究対象としたのは、(1)戦前の民衆による皇室報道の受容態度のジェンダー差、(2)1920-30年代の昭和天皇による生物学研究関連の報道という二つのテーマをめぐってである。(1)においては、戦前期日本の一般女性が、皇室報道を積極的に消費していった過程を、同時代の男性の態度と比較しつつ、性別役割・性差別体制の普及との連関において実証的に考察した。これにより、近代天皇制と「女性」の関係性を、彼女らの生活世界にそくした形で再考している。また(2)では、近代日本において進化論と皇国史観の矛盾が問題化してゆく中、支配層がマスメディアをつうじ、昭和天皇の生物学者としての姿をあえて現前させていった過程とその背景にかんし、ナショナリズムの台頭と科学動員体制との連関において分析を試みている。これをつうじ従来、国粋的な国民統合を推進した媒体と捉えられてきた戦前の皇室報道に、「近代」がふかく刻印されていた事実を明らかにするとともに、当時の政府による近代的知をめぐる対応の多層性を実証的に提示することをめざした。
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Research Products
(2 results)