2004 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論の非摂動的性質の理解-行列模型と非可換空間上の場の理論の解析
Project/Area Number |
04J00203
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 祐介 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 超弦理論 / 行列模型 / 非可換幾何 / 非摂動効果 / 量子重力理論 / 素粒子 |
Research Abstract |
我々の自然界の全ての相互作用は超弦理論によって統一的に記述されると考えられている。超弦理論の定式化は今のところ摂動論的であり、その非摂動効果をいかにして理解するかが重要な問題として残されている。行列模型は超弦理論の非摂動効果を理解するために提案されたものであり、この研究では行列模型を通して超弦理論の非摂動効果を理解することを目的としている。 超弦理論は重力と量子論の統一的な記述を与え得る理論である。重力は時空自身を力学的に扱うため、弦理論から自然に量子論的な空間が現れるのではないかと期待されている。非可換幾何はそのような空間を扱う一つの候補として考えられていて、行列模型の構造からも自然に現れる。そのため非可換幾何を用いて行列模型を再定式化する試みがなされている。しかしながら非可換幾何自身がまだ構成段階にあり、同時に行列模型の性質から非可換幾何についての解析を進めることがなされている。非可換幾何は行列模型の枠内ではDブレーンの記述と密接に関係しているので、Dブレーンの性質を研究することで弦理論における非可換幾何の役割を理解できると考えられる。 非可換幾何の構成において特に平面でない高次元空間の扱いは難しい問題として残されている。この研究ではそのような非可換空間をDブレーンの性質と関係付けて理解することを行った。高次元球面に相当する非可換幾何は低次元のものとは全く違う性質を持っている。対応するDブレーンを考えると、その世界上に低い次元のDブレーンをソリトンとして含んでいることが分かる。低い次元のものは磁場として解釈することができ、これは磁場中の電子の座標が非可換な座標で記述されることと同じ現象であることがわかった。 また近年では超空間の非可換幾何も弦理論の枠内で現れることがわかってきている。超空間の非可換性もDブレーンとの対応で理解できるのかは難しい問題である。そこで簡単な場合として2次元超球面の場合を考察し、磁場と非可換幾何の間の関係を調べた。これは2次元超空間の量子ホール系の解析に相当し、どのような磁場を用意することで超空間の非可換性が実現できるかを数学的な方法を用いて示した。また最低準位での電子の波動関数の性質についても考察し、超対称性から期待される縮退が見られた。
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