2005 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄架橋二核ルテニウム錯体を用いた新規触媒反応の開発
Project/Area Number |
04J00791
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲田 陽一 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アレニリデン / ルテニウム / 硫黄 / プロパルギル位置換反応 / 不斉反応 / 触媒反応 / 有機合成 |
Research Abstract |
研究代表者は多核遷移金属錯体として、硫黄原子により二つのルテニウム核が強固に架橋された構造を有する硫黄架橋二核ルテニウム錯体を選び、この二核錯体を用いた時にのみ特異的に進行する新規な触媒反応の開発にすでに成功している。その反応とは、触媒量の硫黄架橋二核ルテニウム錯体存在下、プロパルギルアルコールが種々の求核試薬と反応し、対応するプロパルギル位置換生成物が高収率かつ高選択的に得られるというものである。化学量論反応および触媒反応の結果から、本触媒反応はアレニリデン錯体を反応中間体として経由していることが明らかとなった。アレニリデン錯体とは不飽和カルベン錯体の一種であり、興味深い反応性を示すことが知られていながら触媒反応の中間体となることがほとんど無かった化学種である。 これらの研究背景を踏まえ、硫黄架橋二核ルテニウム錯体によるアレニリデン錯体を鍵中間体とした触媒的プロパルギル位置換反応を不斉反応化する検討を前年度に引き続き詳細に行った。種々の新規な光学活性なジスルフィドを合成し、これと[Cp^*RuCl]_4を反応させることにより光学活性な架橋硫黄配位子を有する硫黄架橋二核ルテニウム錯体を得た。そして、これらの新規な硫黄架橋二核ルテニウム錯体を用いた、アセトンを求核剤とした触媒的プロパルギル位置換反応を行うことにより目的生成物を最高82%eeで得ることに成功し、これらの結果をまとめ学術誌に報告した。 また、以前に報告していた硫黄架橋二核ルテニウム錯体を用いた芳香族化合物の触媒的プロパルギル化反応について、その適用範囲などを詳細に検討し、その結果を学術誌に報告した。 更に、硫黄架橋二核ルテニウム錯体のような特異な反応性を有する錯体の開発の一環として、pseudo-rotaxaneを利用した新規な配位子を設計・合成し、この配位子を用いた錯体の合成を検討した。
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Research Products
(3 results)