2004 Fiscal Year Annual Research Report
フタバガキ科樹種における遺伝子散布の近交弱勢回避仮説の検証
Project/Area Number |
04J00889
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 やよい 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 種子散布 / 熱帯雨林 / 種子捕食 / フタバガキ科 / 逃避仮説 / ランビル国立公園 / Shorea laxa / Dipterocarpus tempehes |
Research Abstract |
フタバガキ科2種における逃避仮説の検証 植物の種子散布意義に関する仮説の一つに、「逃避仮説」が言われているが、種子を散布しない植物種では、この仮説は成り立つのだろうか? マレーシア・ランビル国立公園で2004年9月に結実した重力散布型のフタバガキ科2種Shorea laxa,Dipterocarpus tempehesを対象とし、種子デモグラフィーの距離密度効果を測る実験を行った。各種母樹を4本ずつ選定し、種子播種実験コドラートを母樹林冠から5、20、80m地点に、3つの密度処理区として設けた。各コドラートに母樹下で集めた種を播種してから、5日後、2週間後、1ヵ月後の生存を追跡した。また自動撮影装置を置き、捕食者の種類と出現頻度を測定した。全体として1ヶ月後の種子の生存率はS.laxaで32%、D.tempehesで4%だった。死亡原因としては、哺乳類による捕食および持ち去りが高い割合を示した。距離別にこの死亡の割合を見てみると、S.laxa、D.tempehesの両種において80m地点で有意に大きいことが分かった。また、密度においては両種ともに個体間でのばらつきが大きく、傾向はみられなかった。自動撮影装置の結果からS.laxaでは、80m地点よりも5m地点での捕食者の種数は大きいが、単位時間あたりの出現頻度は80mで大きいことが推測された。 S.laxa、D.tempehesの両種において母樹から遠くよりも近くで生存率が高く、逃避モデルとは逆パターンを示した。種子源に近い所には、捕食者は集まるが、飽食が起こっているために種子の死亡率は遠くよりも低くなると考えられる。つまり、種子の密度(森林全体の生産量)と捕食者の密度の相対的関係によっては、逃避仮説が成り立たない場合もあり、特に種子散布をしないS.laxa、D.tempehesの種子の段階では、その効果が顕著にでることが示唆された。
|