2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J01059
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 美里 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | チンパンジー / 対象操作 / 道具使用 / 認知発達 / 積木 / 入れ子のカップ |
Research Abstract |
チンパンジーがどのように物を扱うかを調べ、ヒトの認知発達の進化的基盤を探ることを目的に研究をおこなった。チンパンジーの道具使用の中で、もっとも難しいとされるナッツ割り行動が、どのような過程を経て獲得されるかを調べた。飼育下の成体チンパンジーにヒトがナッツを割って見せると、3個体中2個体がナッツ割りにむすびつく行動をおこなった。残る1個体ではナッツ割り行動がみられなかった。初回のセッションで、チンパンジーがどのように石とナッツを操作したかを詳しく調べ、なぜナッツ割りが難しいのかその要因を明らかにした。研究結果を英語の論文として投稿し、すでにオンラインにて公表された。また、ヒトの子どもの発達を調べるために開発された、積木や入れ子のカップという課題をチンパンジーに実施して、その発達を比較した。ヒトは1歳頃から積木をつみはじめるが、チンパンジーでは3個体中1個体のみが2歳7か月時に自発的に積木をつみはじめた。残る2個体は、3歳から訓練を経て積木をつむようになった。積木を高くつむようになっても、ヒトがつくったモデルと同じ色の順番で積木をつむ課題は、チンパンジーには難しいことがしめされた。これらの結果を日本語論文として報告した。入れ子のカップをつかった課題では、対象操作の記述法をあらたに考案した。数字とアルファベットを組み合わせることで、どのカップが・どのように・どのカップに向けて操作されたかを時系列にそった一連の記号として記述できる。この記述法は、対象操作の過程に見られる文法的な規則を明らかにする試みである。チンパンジーがカップを組み合わせる際に、ヒトの発達過程でもっとも遅くあらわれる「部品集積型」とよばれる方法をつかえることが示された。また、カップを組み合わせる効率性を二次元上にあらわすことが可能になった。これらの結果を日本語論文として報告するとともに、英語の論文として投稿した。
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