2005 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体の臨界相境界近傍における固有トンネル特性に関する研究
Project/Area Number |
04J01151
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 義春 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高温超伝導 / 固有ジョセフソン接合 / 微小構造 / 不均一超伝導状態 |
Research Abstract |
Bi系高温超伝導体の結晶構造自体に内包される固有ジョセフソン接合のエレクトロニクス応用を最終的な目標として、現在基礎的な特性を調べるために不足ドープ領域の特性を詳しく研究している。この物質は劈開性がよく清浄な表面を得やすいため種々のプローブで精密な研究が進められている。より一層理解を深めるにはさらにキャリアドープ量依存性を広い範囲で知る必要があるが、この系ではドープ量を幅広く変化させることが困難で、これまでほとんど限られたドープ領域での研究しか行われていない。ドープ領域を変化させるには元素置換あるいは酸素量の増減が必要であるが、元素置換はこの物質では相分離が起こって均質な試料を得ることが困難であり、一方、酸素量を変化させる場合、現実的な時間で還元しようとすると濃度の分布や表面の荒れが起こり、これも均質な試料を得ることが実質的に困難である。 この困難を解決するため、昨年度に開発した両面劈開技術を利用して厚さ30-40nmの極薄劈開単結晶薄膜を作製し、これに対し酸素量制御を試みた。その結果、通常の薄膜作製法で得た薄膜試料とは異なりバルク単結晶とほぼ同じ質の特性が測定できてかつ、バルクでは非常に困難なドープ量の幅広い制御も可能になった。今年度は劈開単結晶薄膜を用いた輸送特性の測定を行い、最適ドープから不足ドープ、絶縁体領域までに系統的に酸素量を変化させた輸送特性をこの物質において初めて明らかにした。この実験結果は、高温超伝導体でみられる不均一性などの特異な超伝導体状態に関して新しい重要な知見を与えるものと考えている。今後はこの両面劈開の技術をさらに発展させ、この物質の異方性や固有ジョセフソン特性を幅広くドープ量を変化させて明らかにしていく予定である。
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Research Products
(1 results)