Research Abstract |
研究2年目は,前半は防御行動の発達過程に関して,電撃棒に対する防御行動を指標とし,ラットが示す社会的関係の発達的変化の影響を検討した.特に,成熟後に観察される社会的優劣関係の防御行動に及ぼす影響と,成熟前に見られる遊び的相互作用経験との関係について,性差を踏まえて詳細に検討することができた.これらの研究については,いくつかの論文を学会誌に投稿したが,3年目にレビュー論文としてまとめる予定である. 2年目の後半は,防御行動を研究しているDr.Blanchardの研究室に従事し,自閉症モデル動物の社会行動の特徴とその発達過程について検討を開始した.自閉症はヒトの発達初期から見られる社会的相互作用の異常としての疾患であり,遺伝子的問題に基づいた機能障害と考えられている.従って,自閉症の動物モデルとしては,どのような社会的相互作用の異常が観察され,それが発達的にどのように現れるかを明らかとしなければならない.もし自閉症のモデルとして適切な行動が観察され,その制御機構と遺伝的背景が明らかとなれば,自閉症の解明,治療に大きな貢献をし得る. 現時点で,自閉症の動物モデルに関するデータベースの作成,検討対象となりうる制御機構の絞込み,そしてノックアウトマウスを利用した実験的検討の準備として,背景系統動物の社会行動特性と発達過程に関する基礎データを得ることができた.それらの1部は,3本の実験論文として投稿する予定である.
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