2004 Fiscal Year Annual Research Report
中世東国の神話形成に関する研究-二所三島の縁起と真名本『曽我物語』-
Project/Area Number |
04J01504
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
阿部 美香 早稲田大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 箱根権現縁起絵巻 / 寺社縁起と本地物 / 東国の中世神話 / 高田大明神縁起 / 真名本『曽我物語』 |
Research Abstract |
東国の中世神話形成の場として重要な、伊豆・箱根・三島の縁起研究は、新出の正覚院本『箱根権現縁起絵巻』の考察を軸として行っている。すでに『中世文学』(2004.6)に論考を発表し、絵巻の調査報告を行うとともに、これが後北条氏の宗教政策と文化との関わりのなかで位置付けるべきものであることを問題提起した。神話の世界をささえる基盤となる二所三島の宗教的な世界像については、『佛一躰灌頂鈔付二所三島参詣』を手掛かりとして探究をすすめており、その成果は、来年度の伝承文学会大会(2005.9)において口頭発表を行う予定である。また、神話形成の原動力となった中世神道説に関する研究の一環として、公刊を予定する『神道切紙』については、新たに付け加えるべき史料が出現したため、調査研究を継続して現在も刊行の準備を行っている。 唱導文芸としての真名本『曽我物語』の研究については、唱導の働きを考えるために極めて重要な史料として醍醐寺の焔魔堂壁絵に関する史料をとりあげ、6月に説話文学会大会で口頭発表を行った。『説話文学研究』40号(2005.6予定)に論文掲載が決定している。 また、東国の神話形成の特質を明らかにするため、西国における神話形成の営みを探るべく、隠岐島後の『高田大明神縁起』の調査、研究を開始した。『高田大明神縁起』における巫女の特異な活躍は、『国文学解釈と鑑賞』(2004,6)において論じたが、8月と9月の2度の実地調査により、基礎的データを整え、基礎的な考察を加えて『女性文化研究所紀要』(2005.3)に報告を行った。来年度も継続して調査・研究を行う予定である。 このほかにも東国の神話の特徴である本地物語とはなにかを常に問いかけながら資料の調査と研究を行っており、中世東国における神話形成の営みについての解明を進めている。
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Research Products
(5 results)