2005 Fiscal Year Annual Research Report
トクヴィルのデモクラシーと啓蒙との関係及び現代の民主的思維様式と自由の考察
Project/Area Number |
04J01721
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高山 裕二 早稲田大学, 政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | トクヴィル / デモクラシー / 個人主義 / 世論 / ロマン主義 / 19世紀前半 / リヴァイヴァリズム / 多数の専制 |
Research Abstract |
2005年度は、引き続き、ガリマール版『トクヴィル全集』の読解を進めるとともに、トクヴィルの訪れた19世紀前半アメリカの歴史的考察、とくにアメリカにおける「政治」と「宗教」の関係(あるいはこの密接な関係の形成過程)の検討をおこなった。 早稲田大学21世紀COE-GLOPE「開かれた政治経済制度の構築」理念班ワークショップ報告(論題:「アメリカのデモクラシーにおける世論と宗教の境界--トクヴィルとリヴァイヴァリズム」、2005年8月)、また同名の論文(只今査読中!)はその成果のひとつである。そこでは、トクヴィルの論じたアメリカの宗教の特徴を整理する一方で、19世紀前半アメリカの「リヴァイヴァリズム」(信仰復興運動)を分析することで、かれのいうようにアメリカの宗教は世論の歯止めとなるどころか、それ自体が「多数の専制」を担うことがあったこと、いわばアメリカのデモクラシーにおける政治と宗教の密接な関係の原型とその危険を明らかにした。 また、社会思想史学会第30回大会自由論題報告「アメリカのデモクラシーのパラドックス--トクヴィルにおける「人種の不平等」の一考察」(『第30回社会思想史学会・大会報告集』、於:岡山大学、2005年9月)、また同名の論文(只今査読中!)はそのもうひとつの成果である。従来十分に注目されてこなかったトクヴィルにおけるアメリカの人種の観察を検討し、人種の不平等が「多数の専制」によって維持ないし強化される構造を明らかにした。 以上のように、本年度はアメリカのデモクラシーにおける「多数の専制」を宗教や人種問題の観点から歴史的文脈に即して考察した。来年度は、この歴史的考察をさらに進めるとともに、19世紀前半フランスのデモクラシーにおける世論と宗教の関係を考察することで、トクヴィルにおける宗教と民主的思惟様式(個人主義)、およびその現代的意義について検討していく。
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