2004 Fiscal Year Annual Research Report
経済物理学の手法を用いた新たな経済時系列データの解析と経済システムの制御方法
Project/Area Number |
04J02073
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
水野 貴之 中央大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 経済物理学 / 金融市場 / 企業所得 / 高頻度データ / 非線形現象 / 確率過程 |
Research Abstract |
円とドルなどの比率を表す外国為替レートが、過去の為替レートの重み付け平均と、非常に激しく動く無相関なノイズとに、分離できることを発見した。この分離により、為替レートにおける重要な変動のみを取り出すことができ、激しいノイズによって埋もれている、暴落を引き起こすトレンドの早期発見などが期待できる。 金融市場の参加者の多くは、将来の価格を、過去の価格変動などの情報をもとに予測している。我々は、この性質をもとにして、平均場近似タイプの価格変動の時間発展方程式を構築した。この方程式は、数時間以内の時間スケールでの、価格変動の統計性を精確に再現できる。この時間スケールでの価格変動には、臨界的な激しい揺らぎ、変動幅に強い自己相関、上昇下降の出方に自明でない特徴が存在する。我々は、これらが、トレーダーの持つ過去の情報をフィードバックする性質によって、引き起こされていることを明らかにした。 資本主義の国では、国内の企業における所得の分布は、臨界現象でよく観測されるべき乗則に従う。これは少数の大企業が、社会全体の所得の大部分を占めていることを意味している。我々は、この企業所得の性質を説明するために、所得変動に平均場近似を導入した。膨大な企業財務データを利用して、所得変動の時間発展が、加算と乗算のノイズを持つ離散型Langevin方程式によって、記述できることを示した。これにより、各企業間の相互作用に関する情報が得られなくても、社会全体における、企業所得の分布を予測することができる。この結果は、産業の景気判断や法人税の政策に役に立つ。
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