2004 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原菌の遊走子運動機構〜マスチゴネマの構造と機能〜
Project/Area Number |
04J02483
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
有川 幹彦 奈良女子大学, 人間文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 疫病菌 / Phytophthora / 遊走子 / マスチゴネマ / ストラメノパイル / モノクローナル抗体 |
Research Abstract |
本研究では、Phytophthora(エキビョウキン属)とその近縁種及び原生動物において、遊走子の鞭毛機能、特に細胞の推進力発生におけるマスチゴネマの働きを分子レベルで明らかにすることを目的とし、その基礎研究としてPhytophthora遊走子のマスチゴネマに対するモノクローナル抗体の作製を行った。 LiCl存在下での遠心操作により、遊走子をシスト化させることなく集める方法を確立した。これらの遊走子から鞭毛を単離することにより、高密度で、且つ他の細胞小器官をほとんど含まない純粋な単離鞭毛分画を得た。この精製した鞭毛を抗原として免疫を行った結果、細胞膜構成タンパク質や収縮胞構成タンパク質、鞭毛軸糸構成タンパク質に対する抗体に加えて、マスチゴネマ構成タンパク質に対する抗体を複数種得ることに成功した。抗マスチゴネマ抗体を用いた蛍光抗体法により抗原の局在性を調べた結果、遊走子が持つ2本の鞭毛のうち、前鞭毛の表面に存在するマスチゴネマにのみ抗体が結合した。抗原タンパク質の局在性をより詳細に調べた結果、ネガティブ染色法と免疫電顕法を組み合わせた手法および免疫電顕法の包埋前染色法により、抗原タンパク質はマスチゴネマの基部から先端部にかけて一様に散在していることが分かった。さらに、包埋後染色法による観察の結果、抗原は細胞膜上や鞭毛内部には存在せず、細胞質中のある顆粒状構造の内部に局在していることが分かった。 今回得られた抗体はマスチゴネマ構成タンパク質に特異的に結合する抗体であり、今後、マスチゴネマの構造と機能を分子レベルで追及するうえで非常に有用であることが示された。
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