2004 Fiscal Year Annual Research Report
接着斑を構成する細胞骨格系タンパク、talinの機能解析
Project/Area Number |
04J02716
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
辻岡 政経 独立行政法人産業技術総合研究所, ジーンファンクション研究センター, 学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | タリン(talin) / 細胞接着 / 細胞運動 / 細胞性粘菌 / 細胞質分裂 |
Research Abstract |
本研究では二種類の異なるタリンの機能の差異を細胞性粘菌を用いて調べている。タリンは接着斑で細胞膜側とアクチン骨格を繋げているだけでなく、インテグリンやアクチンフィラメントの制御、PIPキナーゼの活性化、細胞質分裂にも関与している事が報告されている。 粘菌にはタリンA、タリンBの二種類のタリンがあり、それぞれの破壊株は全く異なる表現型を示すため、それぞれが異なる機能を持つと考えられる。現在私はこの二つのタリンの二重破壊株を作成し、その表現型を解析することにより二つのタリンの共通の、あるいは特異的な機能を明らかにしつつある。 増殖期においてタリンA遺伝子破壊株、タリンB遺伝子破壊株は共に基質に接着するが、両遺伝子の二重破壊株は全く基質に接着しない。従ってどちらのタリンも増殖期の基質に対する接着に関与している事が明らかにされた。 タリンB遺伝子破壊株は発生が途中で止まってしまうが、これは発生期に効率的な細胞運動ができないためであると考えられている。二重破壊株はタリンB遺伝子破壊株よりも早い時期に発生が止まり、発生期の運動能力も更に低い事が見出された。このことからタリンA遺伝子破壊株は発生には異常が見られないにも拘らず、タリンAも発生期の運動に関与していると考えられる。 タリンA遺伝子破壊株は基質への接着を阻害した状態で静置培養すると40%ほどの細胞が多核になる。二重破壊株ではこれより多核の割合が増えることはなかったので細胞質分裂に対する機能はタリンAに特異的であると考えられる。また二重破壊株の分裂の様子を詳しく観察したところ、分裂の失敗が観察された全ての細胞において、ほぼ分裂を完了しているにも拘らず二つの娘細胞の糸状の繋がりを切ることができないために再び融合することが観察された。従ってタリンAは細胞質分裂過程の最終段階に関与していることが示唆された。
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