2004 Fiscal Year Annual Research Report
樹木年輪年代学によるインドシナ半島部過去1000年の気候復元
Project/Area Number |
04J02832
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
佐野 雅規 愛媛大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 年輪気候学 / 気候復元 / フッケンヒバ / 年輪構造 / ラオス / ベトナム |
Research Abstract |
昨年度にラオス北部ホアパン省の2サイトから採取した,総計286本のフッケンヒバ(Fokienia hodginsii)の年輪試料を細胞レベルで観察した結果,年輪構造について,1)晩材を構成する仮道管が放射方向に2,3列並んだだけの極端に狭い年輪が多い,2)早材から晩材への移行が緩慢,3)多量の樹脂細胞が接線方向に並び年輪と間違いやすい,4)同一年輪内での幅の変動が著しいこと,などが特徴として把握できた.これらの構造から,年輪の形成された絶対年代を完全に特定することは困難であったが,年輪試料の一部をもとに時系列長623年(A.D.1381-2003)および550年(A.D.1454-2003)の暫定的な年輪幅の標準曲線をサイト別に構築した.フッケンヒバの標準曲線の構築自体がこれまで報告されていないことに加え,これまで報告されている東南アジア産の標準曲線の遡及期間を,今回構築した標準曲線の両者とも上回ることができた.次にこれら標準曲線を解析した結果,周期数十年の卓越した年輪幅変動が確認できたほか,北東50kmに位置する測候所の10年足らずの気候データと対比すると,年輪幅は3〜5月の平均気温に対して有意な正の相関を示すことから,この期間に多発する霧による水分供給が成長変動に効いているのではないかと推察された.以上の内容は,2004年度日本熱帯生態学会で発表した. 昨年度の調査から,フッケンヒバはラオスに限らずヒマラヤ山脈東端からインドシナ半島に伸びる大褶曲山脈の標高1500〜2000m域に分布しているという見通しを得ていたので,本年度は北ベトナムでフッケンヒバの年輪試料を採取した.
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