2005 Fiscal Year Annual Research Report
量子補正を繰り込んで古典的転回点における発散の問題を除去できる半古典論
Project/Area Number |
04J03793
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
俵口 忠功 龍谷大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 漸近解析 / MKB法 / 半古典論 / 鞍点法 / divergence-free / 転回点 / 焦点 |
Research Abstract |
漸近解析は、微分方程式のWKB解を求めることと積分を鞍点法で評価することから成っている。これらの方法のポイントは微分方程式や積分を、代数方程式で表現される代表点に帰着させて評価することにある。この代数方程式の根は特性根または鞍点と呼ばれる。漸近解析の手法は物理学においてもよく用いられ、量子力学の古典極限(半古典論)、統計力学の熱力学極限、波動光学の幾何光学極限など大きな2つの分野をつなぐ手法として知られている。漸近解析の手法の欠点は、代数方程式の複数の根が縮退すると非物理的な発散が現れることである。このような発散が現れる場所はWKB法では転回点、鞍点法では焦点と呼ばれる。 さて、私および東京工業大学の足立聡助手のグループは以前、divergence-free WKB法という転回点における発散を除去できるWKB法を提案した。これは量子力学でいえば、量子補正の効果を運動量に繰り込んで発散を除去するものである。そこで昨年度から「焦点における発散を除去できる鞍点法」をつくることを目的としてきた。これが作れれば、微分方程式および積分の両面でのdivergence-free漸近解析が完成し、量子力学での量子補正の効果、統計力学での熱ゆらぎの効果、波動光学での回折の効果などをうまく取り入れた極限の描像が見えてくることが期待される。 ところが平成17年度はひとつ想定外のことがあり研究の進展が遅れてしまった。それは、従来の鞍点法を説明した本や論文はいくつかあるもののいずれも不備が多く、鞍点法を完全に説明するためには明らかに言語不足だったということである。それゆえに、われわれの「焦点における発散を除去できる鞍点法」を説明する前に、まず従来の鞍点法のレビューをわれわれ自身で作成しなければならなくなった。平成18年度には、従来の鞍点法のレビュー論文と「焦点における発散を除去できる鞍点法」のオリジナル論文を立て続けに投稿する。
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