Research Abstract |
1.分類学的再検討が必要なエツキイワノカワ,カイノカワ,Peyssonnelia dubyi類,ベニイワノカワ類の観察と分子データの比較のため,北海道南部,東北太平洋岸,瀬戸内海,九州地方ならびにタイでのサンプリングを行い,標本の同定を行った。 2.カイノカワは,日本で胞子体のみに基づき記載されたが,後の研究者によって2度,この種そのものの形態の再検討を伴わずに属名の変更が行われ,現在ではイワノカワ属Peyssonneliaとされている。そのため,イワノカワ属の類似種と区別するには,栄養組織や雌雄の生殖器官の形態を明らかにする必要があった。そこで,タイプ標本ならびに新たに採集したタイプ産地の標本を中心に国内約30カ所の標本を観察し,この種が,平行に並ぶ基層の細胞糸,連絡糸から形成される造胞糸,P.dubyi型に発達する精子嚢を持つことを新たに確認した。その結果,カイノカワは,栄養組織と生殖器官の,すべての分類形質についてP.boudouresqueiと一致したため,この2種は同種の可能性があることが分かった。カイノカワはP.boudouresqueiより先に記載された種であることから,P.boudouresqueiは,Peyssonnelia japonicaカイノカワとして扱うべきであると考えられる。また,国内15カ所とハワイの1カ所のカイノカワの標本について,rbcLとcox 2-3spacer領域の塩基配列を比較した。いずれの場合も,ほかのイワノカワ科や紅藻類の種と比べても,形態をもとにカイノカワに同定した標本は互いに近縁であった。この内容については,平成18年3月に行われる日本藻類学会で発表する予定である。 3.平成17年11月にタイで行われた,第4回国際藻類学会に出席し,ポリストラータ属2種の分類学的再検討について発表を行い,同内容を雑誌に投稿した。
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