2004 Fiscal Year Annual Research Report
構造が明確な環状ポルフィリン多量体の合成と機能評価・光集光素子への応用研究
Project/Area Number |
04J04183
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
加藤 愛子 東京都立大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ポルフィリン / 光合成膜タンパク質 / 環状構造 / 走査型トンネル顕微鏡 / 四角形 / ホスト-ゲスト化学 |
Research Abstract |
光合成を担うタンパク質(LH-II)は、27個ものクロロフィルが車輪状に配列したサブユニットを内包している。これらは高い光捕集能を有し、光合成における高効率光エネルギー利用に貢献していると考えられているが、その詳細は未だ解明されていない。本研究では、環状構造が特異的に示す光化学的性質を明らかにするため、モデル化合物として大環状ポルフィリン多量体を合成する計画を立てた。標的化合物の吸収波長を天然系の示す赤色吸収体に近接させるため、ポルフィリン連結部位にアセチレン結合を選択した。その結果、得られる分子には高い平面性も誘起されると期待される。合成は、直角方向、及び直線方向に置換変換可能な二種類のポルフィリンを用いて行われた。22段階の反応を経て、三角形と四角形の環状ポリフィリン9、12量体が得られた。MALDI-TOF MS、及びIRスペクトルによる帰属では、環状構造を支持する結果が得られた。環状12量体を用いて走査型トンネル顕微鏡(STM)による単分子観察を試みると、巨大内部空孔を有する四角形分子が明瞭に観察された。環状分子の一辺は50Åであり、力場計算から得られた分子サイズ、51Åとも矛盾しない。STMによる観察を続けたところ、分子の内部空孔上に、0-4個の輝点が存在することが明らかとなった。これらは溶媒として用いたジクロロメタンであり、ポルフィリンに導入したアルキル鎖との疎水的相互作用に包摂されたと考えられる。この結果から、環状12量体はホスト分子としての潜在能が期待され、フラーレン、ポルフィリン多量体、クラスター、タンパク質などの巨大分子をゲストとして用いたホスト-ゲスト化学へ応用可能であると考えられる。また、同様の合成条件を利用し、環状15、20量体の単離にも成功した。STMによる単分子観察を行うと、三角形と四角形の明瞭な分子像が得られた。今後、これらの光化学的性質の環サイズによる系統的な比較を行う予定である。
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