2005 Fiscal Year Annual Research Report
構造が明確な環状ポルフィリン多量体の合成と機能評価・光集光素子への応用研究
Project/Area Number |
04J04183
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
加藤 愛子 首都大学東京, 理学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | ポルフィリン / 光合成膜タンパク質 / 環状構造 / 走査型トンネル顕微鏡 / 四角形 / 三角形 / π共役 / レッドシフト |
Research Abstract |
光合成を担うタンパク質(LH-II)は、27個ものクロロフィルが車輪状に配列したサブユニットを内包している。これらは高い光捕集能を有し、光合成における高効率光エネルギー利用に貢献していると考えられているが、その詳細は未だ解明されていない。本研究では、環状構造が特異的に示す光化学的性質を明らかにするため、モデル化合物として大環状ポルフィリン多量体を合成する計画を立てた。標的化合物の吸収波長を天然形の示す赤色吸収体に近接させるため、ポルフィリン連結部位にアセチレン結合を選択した。その結果、得られる分子には高い平面性も誘起されると期待される。合成は、直角方向、及び直線方向に置換基変換可能な二種類のポルフィリンを用いて行われた。今年度は昨年度合成に成功した環状12量体の合成法を応用し、さらに環サイズの大きな環状20量体の合成に挑戦した。まず、12量体合成時の鍵化合物であるコーナー型3量体にPd触媒を利用した薗頭カップリング反応を行い、コーナー型5量体を合成した。それに次ぐ4量化カップリング反応により、標的化合物である環状20量体を得た。興味深いことに、環状20量体と共に、速度論的支配性生物である三角形型化合物、環状15量体も同時に得ることができた。これらをMALDI-TOF MS、及びIRスペクトルを用いて解析すると、環状構造を支持する結果が得られた。これらの分子の高い平面性を考慮し、走査型トンネル顕微鏡(STM)による単分子観察を試みると、巨大内部空孔を有する四角形、及び三角形分子が明瞭に観察された。四角形分子の一辺は84Åであり、力場計算から得られた分子サイズ、83Åとも矛盾しない。三角形分子の高さサイズを四角形のものと比較すると、高さにほとんど差異を示さないことが明らかとなった。このことから、三角形分子は構造的に歪みが生じると予測されるものの歪みはほとんどなく、四角形分子とほぼ同様の平面性を有すると推測できる。環状15、20量体の光化学的測定を行い、環状4、12量体のものと比較・検討を行った。すると、環サイズの増加に伴い、吸収波長のレッドシフトとQバンドの吸収強度増大が観測された。これはポルフィリン数の増大に伴うπ共役の拡張を示唆する結果であると考えられる。今後さらに大きな環状体を合成し、光化学的性質の系統的な評価を行う計画である。
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