2005 Fiscal Year Annual Research Report
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04J04228
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
片野坂 友紀 国立循環器病センター(研究所), 循環分子生理部, 日本学術振興会特別研究員SPD
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Keywords | Na^+ / Ca^<2+>交換体 / 心肥大 / 心不全 / リン酸化による調節 / PKC / calcineuri |
Research Abstract |
心筋細胞における細胞内Ca^<2+>ハンドリングの異常が心機能不全を引き起こすことは良く知られているものの、その分子機序は未だ解明されていない。心筋細胞に発現する多数のCa^<2+>輸送体のうち、Na^+/Ca^<2+>交換体(NCX)は、心臓の拍動ごとに流入してくるCa^<2+>を細胞外へ排出する唯一の細胞外へのCa^<2+>排出系である。我々は近年、肥大心筋細胞において活性化したcalcineurinがNCXによるCa^<2+>排出能を著しく低下させるという実験的証拠を得た。本年度は、「肥大心筋細胞におけるNCXの活性低下」を引き起こす分子機序を明らかにするため、NCX本体のリン酸化状況とNCX活性化状況を比較検討した。その結果、α-アドレナリン受容体のアゴニストであるphenylephline処理により誘導した肥大心筋細胞において、NCX本体はPKCαによりリン酸化修飾を受け、活性が低下していることが明らかになった。生体内においては、肥大心筋細胞におけるcalcineurinシグナリングにおいて、PKCαの活性化が細胞内Ca^<2+>ハンドリングの異常および心機能不全を引き起こすことは広く知られているために、その下流ターゲット因子としてNCXが機能阻害を受けるルートが病態の悪化に密接に関わっているのではないかと考えられた。また、このリン酸化修飾には、細胞内のcalcineurin活性が高いことが必須であることが明らかとなった。この観点から、βアドレナリン受容体刺激による誘導により作製した肥大モデルよりも、Gqシグナリングを活性化することが知られている大動脈結紮により肥大誘導したモデルマウスの心筋細胞において、calcineurinおよびPKCαを介したNCXの活性低下が顕著であろうと考えられた。そこで、両モデルマウスの心筋細胞においてNCX活性を測定したところ、予想されたように大動脈結紮による肥大モデルの心筋細胞においてのみ、NCX機能阻害が起こっていることが明らかになった。以上のことは、これまで不明であった肥大細胞におけるNCX活性阻害が、calcienurinとPKCαが活性化されている状況下において起こりうること、またこのNCX活性阻害経路をターゲットとすることでNCXの細胞外へのCa^<2+>排出機能を亢進することが、今後の新規心不全治療ターゲットとなり得る可能性を示唆すると言える。
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