2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J05107
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
平山 至大 広島大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | エントロピープロダクション / 絶対連続不変測度 |
Research Abstract |
力学系の統計的性質を記述する不変測度は、何らかの意味において標準的な性質を持っていることが期待される。この場合当然、どのような観点に立つかに応じて種々の標準が考えられるが、現在までの研究で非一様双曲型と呼ばれる広いクラスの力学系に対して、その不変測度の(1)体積要素に関する絶対連続性、(2)統計力学的平衡性、(3)次元論的平衡性、(4)アトタクターの物理的観測可能性、が実は同等であることを明らかにしていた。他方で、力学系がAnosovという強い双曲性を持つ場合に、性質(1)は更に(5)全ての周期軌道上でヤコピアンの絶対値は1をもつ、という性質とも同等であることが古くから知られていた(従ってAnosovの場合には(1)〜(5)全てが同等な性質となる)。(1)〜(4)が全て測度に課せられた性質であるのに対し、性質(5)は測度に依らないという点で、この同等性の主張は強い。このことからもAnosov系の特殊性が垣間見える。それではAnosovとは限らない力学系に対しても性質(5)との同等性が成立するかという間題は自然でありかつ興味深い。この性質(5)を含めた不変測度の性質に関する同等性の間題について鷲見直哉氏(束京工業大学理学部)と共同研究を行ない、。本年度は以下のような成果を得た。 まず、非一様双曲型力学系一般には性質(5)との同等性が成立しないことを確認した。実際に、全ての周期軌道上でヤコピアンの絶対値は1をもつが、体積要素に関して特異な不変測度をもつ非一様双曲型力学系がある。この現象に注意して、非一様双曲型力学系が性質(5)をもち、かつ不変測度が不安定多様体上に密度をもつならば、性質(1)が成り立つことを示した。また、2次元トーラス上の拡大性をもつ非一様双曲型力学系に対しては、逆の主張が成立することも示した。更に本研究においては、性質(5)とエントロピープロダクションとの関連についても明らかにした。 これらの結果は鷲見氏との共著論文として纏められ、その要旨は数理解析研究所講究録に採録予定であり、本論分はHiroshima Mathematical Journalにおいて現在査読中である。
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Research Products
(2 results)