2004 Fiscal Year Annual Research Report
溶存態タンパク質から見る海洋溶存態有機物のダイナミクス
Project/Area Number |
04J05630
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 奈海葉 名古屋大学, 環境学研究科(コア), 特別研究員-PD
|
Keywords | 溶存態有機物 / 溶存態タンパク質 |
Research Abstract |
海水中の有機物は、海水をガラス繊維濾紙で濾過することにより、懸濁態有機物と溶存態有機物の2種類に便宜的に大別される。海洋溶存態有機物は、地球表層における最も大きな有機物のリザーバーのひとつで、地球上の物質循環を理解するためには、溶存態有機物を考慮した海洋物質循環の知識が不可欠である。海水中において、有機分子は、その結合状態毎の挙動が大きく異なるため、海洋物質循環を理解するためには、構成単位ではなく、海水中に存在する自然の状態に近い、高分子レベルで有機物を解析することが必須である。本研究では、海洋溶存態タンパク質に着目し、構成単位であるアミノ酸ではなく、タンパク質の状態で分析を行う。 これまでの溶存態タンパク質の研究では、海域・深度を問わず、外洋海水中に少数の溶存態タンパク質分子が存在していることが明らかになっている。また、研究代表者のこれまでの研究成果より、溶存態タンパク質分子の化学構造が一様ではないことから、溶存態タンパク質分子が海水中に存在する他の物質と相互作用することにより、溶存態有機物として存在し得ていることが示唆されている。溶存態タンパク質分子は、海水に界面活性剤の一種であるSodium Dodecyl Sulfate (SDS)を添加後、限外濾過法によって試料を濃縮することによって、その後の分離・検出に成功している。したがって、溶存態タンパク質分子は、界面活性剤結合能を持った状態で海水中に存在していると考えられる。本研究では、溶存態タンパク質の存在状態を明らかにするために、生体タンパク質を可溶化・抽出する場合にしばしば用いられる、SDSを含めた様々な界面活性剤を用いた溶存態タンパク質分子の濃縮(海水からの抽出)および界面活性剤を用いない状態での溶存態タンパク質分子の濃縮を試みた。本年度は、学術研究船白鳳丸KH04-5次航海に参加し、表面海水試料の採取および上記濃縮を行った。
|