2004 Fiscal Year Annual Research Report
黄砂粒子表面での物理化学過程の解明とその広域拡散がもたらす物質循環への影響評価
Project/Area Number |
04J05754
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松木 篤 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | エアロゾル / 不均一反応 / 黄砂 / 大気環境 / 大気境界層 / 物質循環 / 国際研究者交流 / 中国 |
Research Abstract |
本研究は鉱物エアロゾル(黄砂粒子)が対流圏を輸送される過程で生じる変質過程を個々の粒子レベルで明らかにしようとするものである。黄砂粒子の表面では硫黄や窒素酸化物が吸着されるといわれているが、はたして全ての黄砂粒子が一様の速度をもって反応するのであろうか。この疑問に答える目的で、航空機観測や中国における気球観測により採集された鉱物粒子を電子顕微鏡によって分析し、鉱物粒子個々の組成が変質の度合いにどの程度影響を及ぼしているのかに焦点を当て解析を行った。 中国北京市の大気境界層内で採集された鉱物粒子の多くは硫黄を含んでおり、その検出割合、含有量ともに黄砂発生源地域で観測されるものより有意に高く、粒子表面でSO_2ガスとの不均一反応により生じた硫酸塩であると示唆された。微小な硫酸塩粒子と鉱物粒子間で起きる凝集効果の評価も行ったが、観測された硫黄含有量を説明できないことから、硫黄が反応によって取り込まれたことを支持する結果となった。鉱物種による硫黄の含有量にも差が見られ、アルカリ土類金属(Ca, Mg)を多く含む鉱物種がより反応性に富むことを示した。 また、反応の鉱物種依存性に加え、相対湿度が硫黄の取り込み効率を支配する重要な要因であることもわかってきた。通常大気境界層内では高度が高くなるにつれ湿度が高くなり、逆転層より上空では極端に乾燥する傾向が見られる。この湿度依存性は係留気球により様々な高度での粒子採集に成功した結果明らかになったものである。これは高い湿度の下で粒子が潮解、もしくは表面に凝結した水滴により酸性ガスの取り込みが促進された結果と考えられる。 以上の結果は実際の大気中で黄砂粒子表面に起こる変質過程を詳細に捉えた結果として評価でき、国際ワークショップを始めとする学術会議等で発表されたほか、国際学術誌への掲載も予定されている。
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