Research Abstract |
本研究の目的は,胃粘膜表層部の表層粘液細胞で特異的にα4GnT遺伝子を過剰発現させたトランスジェニックマウスを作出することにより,α1,4-GlcNAc残基含有O-グリカンの機能,殊にピロリ菌感染における防御機構を個体レベルで明らかにすることである.平成16年度は,α4gntトランスジェニックマウス作製に向け,ラット肝臓脂肪酸結合タンパク質(L-FABP)プロモーター領域のクローニング及びヒトα4gnT遺伝子のサブクローニングを経て,導入遺伝子断片用ベクターの作製が終了した.現在,マイクロインジェクションに向けて導入遺伝子断片を調整している. 当講座では,α1,4-GlcNAc残基含有O-グリカンの生理的意義を詳細に解明するため,α4gntトランスジェニックマウスのみならず,α4gntノックアウトマウスも作製している.現在,ヘテロ欠損体の交配を展開している. 一方,in vitroのレベルでは,ヒト胃粘膜を用いて,α1,4-GlcNAc残基含有O-グリカンを含むMUC6画分,同O-グリカンを含まないMUC5AC画分を精製した.MUC6画分に含まれるα1,4-GlcNAc残基含有O-グリカンは,ピロリ菌に対して増殖を抑制し,抗菌的に作用することを明らかにした.この結果より,α1,4-GlcNAc残基含有O-グリカンは,腺粘液を分泌する粘液細胞自身を菌の感染から防御していることが示唆された(Kawakubo M, Ito Y, et al., Science 305,1003-1006,2004).
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