2005 Fiscal Year Annual Research Report
気候変動、社会変化に対する大規模潅漑農地の受容度の動的分析
Project/Area Number |
04J06155
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
長野 宇規 総合地球環境学研究所, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 気候変動 / 灌漑農業 / IMPAM / トルコ / Seyhan |
Research Abstract |
本研究はトルコ共和国の中央南部に位置する大規模灌概農地(Lower Seyhan Irrigation Project)の水収支構造と管理構造を解明してモデル化し,2070年代に予想される気候変動と社会変化シナリオに対しての受容度を解析することを目的とする. 平成17年度には現況分析として,1)農地の3次灌漑排水路域の水収支の計測の継続,2)デルタ末端における塩害の年変動の観測の開始,3)灌漑地域全域の浅層地下水位と塩分濃度の長期変動の解析,4)Irrigation Management Performance Assessment Model(IMPAM)の開発を行った. 結果として,1)農地からの排水は灌漑期間が圧倒的に多く,低い灌漑効率がその原因であること,2)デルタ上流の既存の灌漑農地は浅層地下水の塩分濃度が減少している一方で,地下水位にあまり変化が見られないこと,3)海岸部における塩害も改善傾向にあること,4)水路からの漏水と栽培管理用水の適切な取り扱いによりIMPAMで水収支構造の再現が可能なことなどが明らかになった.20年以上にわたる過剰灌漑の結果,デルタ全体に広がっていた塩害が緩和されたと考えられる. 一方で気候変動が将来の作物生育や灌漑需要量に与える影響の分析も開始した.IMPAMに筑波大学により提供された2070年の擬似温暖化気候データを入力し,影響評価のシミュレーションを行った結果,冬季の降雨量の減少が与える影響が重大であることが明らかになった.擬似温暖化気候データは,まだ精度が十分ではないため,影響評価の信頼性は乏しい段階である. 今後は擬似温暖化データの更新とともに,社会変化シナリオを検討して作付けや管理状況に反映させ,感度解析を進めながら,IMPAMによる受容度評価の信頼性を向上させていく予定である.
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Research Products
(1 results)