2005 Fiscal Year Annual Research Report
淡水域における三者系生物間情報化学物質の機能と構造の解明
Project/Area Number |
04J07071
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
高原 輝彦 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 情報化学物質 / 被食回避行動 / ケミカルコミュニケーション / ニホンアマガエル幼生 / ツチガエル幼生 / ギンヤンマ幼虫 / 化学分析 / 生物検定 |
Research Abstract |
カエル類の幼生は、捕食者由来の情報化学物質を感知し、行動や形態を変化させて被食を回避することが知られている。しかし、情報化学物質の機能と構造はほとんど明らかにされていない。本研究における達成課題は、1、情報化学物質によるカエル幼生の行動変化を数値的に指標化する生物検定法の確立および情報化学物質の精製と単離、2、三者系におけるケミカルコミュニケーションの効果の解明、3、幼生の被食回避行動メカニズムの解明である。本年度に明らかになった知見を以下に記す(課題2は昨年度までに達成済)。 1、ギンヤンマAnax partenope juliusの幼虫(ヤゴ)の飼育水を化学的に処理して、ツチガエルRana(Rugosa)rugosa幼生に与える生物検定を行なった結果、ヤゴ由来の情報化学物質は、難揮発性で弱い疎水性をもち、陽イオン性の物質であることが示唆された。また高速液体クロマトグラフ(HPLC)による分析結果から、ベンゼン環をもつ化合物であることが示唆された。今後はHPLCによる分析を進め、核磁気共鳴法(NMR)などを用いて構造決定を行なう。 3、ヤゴ由来の化学物質の受容によるニホンアマガエルHyla japonica幼生の行動変化が、被食回避に適応的であるかどうかを調べた。その結果、化学物質を受容していない場合と比べて、化学物質を受容した場合では、幼生が攻撃されるまでの時間が顕著に長く、攻撃される頻度が少なかった。攻撃されたときの幼生の状態を調べると、幼生が水底で動いているときにヤゴは頻繁に攻撃したことから、化学物質を受容した幼生は活動時間を低下させることによって、ヤゴに発見されにくく、攻撃される頻度が減少したと考えられる。また、化学物質を受容した幼生はすばやく遠くへ泳ぎ、ヤゴが接近しにくいことがわかった。以上の結果から、化学物質の受容による幼生の行動変化は生存に有利な適応的反応であることが明らかになった。
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