2004 Fiscal Year Annual Research Report
超対称SO(10)大統一模型における陽子崩壊過程の解析
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04J07336
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Research Fellow |
菊池 樹 立命館大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 大統一理論 / 超対称性 / レプトン・フレーバーの破れ / 陽子崩壊 / ニュートリノ / 標準模型を越える物理 |
Research Abstract |
私の研究課題は、「超対称をもつSO(10)大統一理論の現象論」である。この模型は、2001年度以降、我々の研究グループで提唱してきた(最小拡張の)超対称SO(10)大統一模型に基づいており、荷電フェルミオンの質量と混合角を再現するように拡張された大統一理論の1つであり、ヒッグス場としてSO(10)の10表現と126表現の二種類を導入した模型である。この模型の本質的なコンセプトは、クォークの質量と混合角、及び荷電レプトンの質量という比較的良く確立された実験データを用いて、(未確定の)ニュートリノの質量と混合角を予言する事である。この模型の特徴は、繰り込み可能性を課すことによってパラメータの数を減らし、クォークセクターの小混合角とレプトンセクターの大混合角という一見、大統一理論の思想と矛盾する、実験値のデータを再現していることである。この特徴により、従来の模型に比べてより予言能力の高い模型となっており、クォークセクターからレプトンセクターへというフレーバー物理の1つの方向性を見いだしていると考えている。さて、私は2003年度以降、この最小拡張の超対称SO(10)大統一模型によって予言されたニュートリノの(ディラック型)湯川結合行列に基づき、レプトン・フレーバーの破れを伴う荷電レプトンの稀崩壊過程の評価を行った。この荷電レプトンの希崩壊現象は、ニュートリノ振動によって、レプトン・フレーバーの破れが確証された画期的な事実に誘引されて、荷電レプトンセクターでも起こる事が期待されている現象である。ただし、標準模型においては、GIMメカニズムが非常に良い精度で成り立つため、理論的に大きな分岐比は禁止されるが、超対称性を導入する場合、ソフトな超対称性の破れを記述する質量項の存在により、近い将来の実験に掛かり得るような分岐比が期待されている。実際、私が行った解析においても、SO(10)模型に特徴的な事として、tanβと呼ばれるパラメータが大きい結果、特に、μ→e_Y崩壊に対して実験家にとっても非常に興味深い結果を得ることが出来た。具体的には、大統一スケールにおいて(最小拡張の)超重力理論の条件を課してパラメータの数を減らし、繰り込み群の効果を評価して分岐比を求めた。その結果、他の統一模型に比べて大きな分岐比を予言し、電子の電気双極子モーメントやミューオンの異常磁気モーメントに関しても、実験とコンシステントな値を得る事が出来た。このため、近い将来、この過程を通して我々の模型を実験的に確証する事が出来ると考えている。一方で、一般に、大統一理論の大きな特徴として、陽子崩壊が期待されている。特に、超対称を持つ模型の場合、一般に、ヒッグス・ボソンの超対称パートナーである、ヒッグシーノを介した"次元5の陽子崩壊"と呼ばれるプロセスが非常に大きな確率で予言されている。私は2004年度、この陽子崩壊過程について、最小拡張のSO(10)大統一模型において解析を実行することを考えた。それにあたって2つのステップを考えた。まずは、荷電フェルミオンの質量スペクトルを再現するような湯川結合定数を固定した上で、ヒッグスセクターのパラメータを一般的に動かして、陽子の具体的な寿命を予言することである。そして最終的には、ヒッグスポテンシャルを確定し、実際に、SO(10)からMSSMへと破る事の出来る(ミニマルな)模型を構成することを考えている。私はこれらの現象の解析を通して、我々の模型をよりリアリスチックなものとしていく事を目指している。
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Research Products
(8 results)