2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J07445
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉川 孝 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 哲学 / 現象学 / フッサール / 自然 / 空間 / 志向性 / 倫理 / 実践 |
Research Abstract |
本研究の課題は「現象学における自然と精神」であり、自然と精神を主題としているE・フッサールの『イデーン 第2巻』を中心に据えて、M・ハイデガー、M・メルロ=ポンティ、E・レヴィナスらの現象学派の思想的展開を明らかにしようとする。3年度にわたる研究計画の1年目にあたる本年度においては、この課題への取り組みとして二つの側面からの研究が相補的に行われた。第一に、フッサールの自然哲学の解明が行われ、人間が身体性に依拠して世界へと関係する様が明らかにされた。そこではデカルトやロックらの近世の哲学者による「第一性質」と「第二性質」という「感性的性質」の区分が、「客観的性質」と「主観的性質」の区分ではなく、「事物の性質」と1「世界の性質」の区分として現象学的に定式化されていることが指摘されている。この成果は『哲学』(第55号、日本哲学会編)に「経験的媒介の現象学-フッサールにおける感性的性質の問題」として発表されている。第二に、フッサールの倫理思想の成立と発展を追跡する研究が行われている。そこでは、19世紀ウィーンの実証主義的風土を体現するブレンターノ学派から出発したフッサール現象学の根本概念(志向性)や問題設定(意識対象性の構成の問題)が、カントやフィヒテなどドイツ観念論の受容とともに変貌するプロセスが明らかにされている。さらには、実践哲学の観点から、ハイデガーやレヴィナスといったフッサール以後の現象学との関連も指摘されている。これらの成果は『倫理学年報』(第54集、日本倫理学会)に「志向性と創造-フッサールの意志の現象学」として、『フッサール研究』(第3号、科学研究費報告書)に「哲学の始まりと終わり-現象学的還元の動機をめぐって-」としで発表されている。
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