2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J07445
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉川 孝 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 哲学 / 現象学 / フッサール / 認識 / 倫理 / 実践 / 理性 / 精神 |
Research Abstract |
本研究の課題は「現象学における自然と精神」であり、自然と精神を主題としているE・フッサールの『イデーン第2巻』を中心に据えて、M・ハイデガー、M・メルロ=ポンティ、E・レヴィナスらの現象学派の思想的展開を明らかにしようとするものである。3年度にわたる研究計画の2年目の本年度においては、主にフッサールの精神哲学の問題系に対する集中的な取り組みが行われた。それはフッサールの現象学を倫理思想の発展として読み解くことを目指している。具体的な成果としては、「フッサール現象学の倫理的転換--『ロゴス』論文から『改造』論文へ--」が『可能性としての実存思想』(異存思想論集XX、2006年1月)に発表されている。その目論見は、フッサール現象学が、主著『イデーンI』(1913年)の認知主義的傾向から一転して、1920年代初頭のテキストで認識論的問題には還元されない実践理性の固有の問題を展開したことを示そうとするものである。20年代初頭のこうした立場の変化は、倫理的転換と呼びうるものであり、ここでは、従来の静態的現象学から発生的現象学への移行というフッサール像に代わって、その背後に隠された「理論理性の優位」から「実践理性の優位」への立場変更の意味も明らかにされている。こうした研究の一環として、「問いの現象学」(日本現象学会個人研究発表、2005年11月)、「感情のロゴス、理性のパトス--フッサールによる定言命法の現象学的解釈」(第5回フッサール研究会シンポジウム「フッサールと実践理性」提題、2006年3月)という二つの口頭発表もなされている。
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