2004 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀韓国において近代的知識体系が人々の認識と行為に与えた影響の文化人類的研究
Project/Area Number |
04J07704
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
太田 心平 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 実学派 / 在京士族 / 韓国朝鮮研究 / 両班研究 / 内発的近代論 / 民衆的認識 / 儒教文化 / 都市 |
Research Abstract |
20世紀の韓国朝鮮において、実学派の在京士族層の家族がたどってきた文化的特徴とその変化について、特に二つの家族を中心として研究している。 「実学」とは、韓国朝鮮の儒学において、旧態依然の思想や制度に意義を唱える諸々の立場を総称することばとして使われてきた。また「在京士族層」とは、「在地士族層」に対して都であるソウルとその近接地に勢力を張る士族の門中を示すことばである。 実学派や在京士族層と呼ばれる人々は、近年の韓国社会にあって、しばしば内発的近代思想の旗手として語られている.本研究では、まずこの内発的近代性について研究した学術論文を収集し、次いで内発的近代論が一般社会でどのように捉えられているのかを調査している。現在までのところ結果として、韓国の学界、特に哲学以外の学術論文においては、近代性の概念が実用性や都市性とイコールで論じられがちであるごとが分かった。また、実学の「実」の字が「虚」に対するものとして捉えられ、絶対的に評価されるべきものだという民衆的認識に基づいて捉えられていることも分かった。これゆえに実学派や在京士族層が内発的近代思想の旗手として語られていることが、これまでのところ予測できている。 次に本研究では、実学派の在京士族層という立場を持つ三つの門中組織を取り上げてその実情を掘り下げ、特にその中の一つの門中組織について文化人類学的な参与観察による調査を行っている。ここでは、実学派と言われない党派の人々たちや在地士族層と彼(女)らとの間で具体的な生活指針や規律に見られる違いや、両者の間の共通点を掘り下げようとしている。さらに、上記のような内発的近代論の流布によって彼(女)らが直面している立場の変化や、彼(女)らが行うようになった自己主張など、彼(女)らの文化変動についても調査しようとしている。
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Research Products
(2 results)