2004 Fiscal Year Annual Research Report
残存する記憶機能を活用した記憶リハビリテーションの開発とその効果の検討
Project/Area Number |
04J07934
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
増本 康平 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 実演効果 / 失行症 / 再認 / 再生 / 記憶リハビリテーション / エピソード記憶 |
Research Abstract |
実演効果とは、言葉だけで憶えるよりも実際にその内容を実演した方が記憶成績が高まることをいう。 本年度は国内外で初めて、行為表象の処理に障害のある失行症患者を対象とし、実演効果における行為表象の処理の関与についで検討した。 失行症とは、麻痺、不随意運動、失調、筋緊張異常などの症状がないにも関わらず、目的に沿って運動を遂行できない状態をさす。実演効果の生起に運動プログラムといった行為表象に関する処理が重要であるならば、失行症患者には実演効果がみられないと考えられる。そこで本実験では、失行症以外の認知障害を呈さない希有な病態を示した患者と高齢者20名を対象とし、実演条件と言語条件の自由再生と再認成績を比較した。 失行症患者の再生成績を条件間で比較した結果、言語条件よりも実演条件の方が成績は有意に高く実演効果がみられた。このことから、行為表象の処理は実演効果の決定的な要因ではなく、運動感覚情報の処理といった別の処理が実演効果には重要であることが示唆された。しかしながら興味深いことに、失行症患者め再認成績には言語条伴と実演条件に差はなく、実演効果がみられなかった。この結果は、本実験で用いた再認課題の特性によるものだと考えられる。本実験から、行為表象の処理は実演効果の生起に関連していないわけではなく、その処理が実演効果に影響するかどうかは、求められる記憶課題に依存することが明らかになった。 そして、実演効果の記憶リハビリテーションへの応用を検討する際に、"失行症を呈しているかどうかを考慮する必要性が示された。
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