2004 Fiscal Year Annual Research Report
リポキシゲナーゼモデル錯体によるリノール酸の位置選択的酸素化反応とその制御
Project/Area Number |
04J08123
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北口 博紀 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リポキシゲナーゼ / 酸素添加酵素 / 位置選択的付加反応 / リノール酸 / 13-HPOD / ラジカル中間体 / 自動酸化反応 |
Research Abstract |
リポキシゲナーゼは活性中心に非ヘム単核鉄を有し、リノール酸等の不飽和脂肪酸に分子状酸素を位置選択的に導入する酸素添加酵素である。リポキシゲナーゼではリノール酸の炭素の11位の水素原子を引き抜き、13位に選択的に酸素分子を付加して13-HPODが生成する。この酸素分子の位置選択的付加反応機構についてはまだよくわかっていない。本研究ではジ-t-ブチルペルオキシドを用いたリノール酸の光自動酸化反応におけるラジカル中間体をESRで直接検出して解析することにより、リポキシゲナーゼにおける酸素分子の位置選択的付加機構に関する知見が得られた。 リノール酸を含むジ-t-ブチルペルオキシド溶液(BuOOBu)にアルゴン下低温で紫外線照射を行うと、BuOOBuのO-O結合が開裂して生成するt-ブトキシルラジカルがリノール酸の11位の水素原子を引き抜いてリノール酸ラジカルが生成する。このラジカル種に由来するESRシグナルがg=2.0024に観測された。コンピュータシミュレーションから同定した超微細結合定数より、11位の炭素のスピン密度が最大となることがわかった。同様にして酸素飽和溶液中で光照射しながらESR測定を行うと、g=2.0152にペルオキシルラジカルに特徴的なシグナルが観測され、1つの水素による超微細分裂が確認できた。11位を重水素化したリノール酸を用いると、超微細分裂は観測されなくなる。一方、13-HPODを含むBuOOBu溶液に光照射した場合も、同様にペルオキシラジカルに由来するESRが得られた。11位を重水素化した13-HPODを用いると、この場合も、Hによる超微細分裂は見られなくなった。 以上の結果から、均一系ではペルオキシル基は13位から11位に転移し、リノール酸ラジカルへの酸素の付加位置は13位に固定できないことがわかった。このことは、リポキシゲナーゼでは酸素の導入経路がタンパクにより制御されていることを示す。
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Research Products
(1 results)