2005 Fiscal Year Annual Research Report
有櫛動物の軸形成機構から見た後生動物の進化的起原に関する研究
Project/Area Number |
04J08918
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 温子 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 有櫛動物 / クシクラゲ / 軸構造 / 腸 / 放射相称動物 / T-boxファミリー / brachyury / Tbx1 |
Research Abstract |
本研究の目的は、放射相称動物であるクシクラゲ(有櫛動物)の軸構造を、特に消化器官の軸構造に焦点をあてて、比較分子生物学的手法、及び、実験生物学的手法を用いて理解することである。前年度の研究において、クシクラゲからbrachyuryホモログと考えられる遺伝子断片を得たが、その断片は系統学的解析を行うために必要なT-boxドメインを完全には含んでいなかった。そこで、本年度は、その断片の5'末側と3'末側の配列をRACE法により解析し、T-boxドメインを含む全長配列を明らかにした(1679bp,433aa)。続いて、T-boxドメインの配列を用いて系統解析を行い、この遺伝子がT-box遺伝子ファミリーのbrachyuryサブファミリーに属することを明らかにした。whole mount in situ hybridization法による発現パターンの解析は、クシクラゲbrachyury遺伝子が、他の生物と同様に、原口周辺に発現していることを明らかにした。 また、クシクラゲから新たに4種類のT-boxファミリー遺伝子を単離・同定した。そのうちの一つであるクシクラゲTbx1遺伝子は、クシクラゲ胚において胃と呼ばれる部分で発現していた。脊索動物においてTbx1遺伝子は鰓弓や体節の形成に関わっていることが示唆されている。クシクラゲTbx1遺伝子の発現パターンはTbx1遺伝子の機能の祖先型を考える上で興味深い。 尚、PCRの鋳型となるクシクラゲRNAの単離とwhole mount in situ hybridizationのためのクシクラゲ胚の調製は、クシクラゲMnemiopsis leidyiの生息地である米国マサチューセッツ州のMarine Biological Laboratory(Woods Hole, Massachusetts, USA)にて行われた。
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