2004 Fiscal Year Annual Research Report
ウシ白血病ウイルス感染症における宿主免疫応答と病態の解析
Project/Area Number |
04J09146
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笛吹 達史 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ウシ白血病ウイルス / ヒツジ / サイトカイン / 腫瘍壊死因子(TNF) / TNF受容体 |
Research Abstract |
ウシの腫瘍性疾患として頻度の高いウシ白血病の防除を目的に、その起因ウイルスであるウシ白血病ウイルス(BLV)と宿主免疫応答との関連について解析を行っている。 これまでに、BLV感染ヒツジの感染初期における免疫応答をサイトカイン発現解析によって評価した。ウイルス増殖に抵抗性を示した個体では、ウイルスが盛んに増殖した個体に比べ、細胞性免疫の活性化を示すインターフェロンやインターロイキン2の発現が強く見られたことから、ウイルス感染細胞を排除するための細胞性免疫の誘導が、レトロウイルスであるBLVの排除に対しても重要であることが示された。 しかし、時間の経過とともに、ウイルス増殖抵抗性の個体においてもウイルス増殖が認められた。これまでにウシ白血病の病態進行における腫瘍壊死因子(TNF)の関与が示唆されていたため、TNFのウイルス増殖に対する作用について解析した。末梢血中からBLVが強く検出される高度感染個体において、組み換えTNFがウイルス増殖を促進する作用を示した。このような個体では、BLVの標的細胞であるB細胞が正常個体に比べて顕著に増数しており、さらに、その白血球集団は強い自己増殖能を有していた。この自発性増殖が組み換えTNFの添加によって増強されたことから、TNFが感染細胞を増殖させることでウイルス増殖を促している可能性が考えられた。 その機構として、(1)細胞増殖作用を有する二型TNF受容体の発現促進、(2)細胞死を誘導する一型TNF受容体の発現抑制、(3)あるいはその両者が考えられるため、現在、BLV感染ヒツジよりB細胞を単離し、TNFおよびTNF受容体の発現量を解析中である。さらに、BLV感染動物由来B細胞のTNFに対する反応性について解析し、BLVによる白血病の前段階であるリンパ球増多症とTNFとの関連性について明らかにする予定である。
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