2005 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫幼虫における外皮形態形成の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
04J09245
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
二宮 陽介 北海道大学, 大学院地球環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ドーパ脱炭酸酵素 / チロシン水酸化酵 / 真皮細胞 / GBP / ドーパミン / メラニン |
Research Abstract |
昨年からメラニン合成経路の解明に向け、昆虫のドーパミンメラニン形成において不可欠だと考えられている、TH(チロシン水酸化酵素)とDDC(ドーパ脱炭酸酵素)の両者に注目し実験を進めてきた。組織化学的解析(免疫組織染色・in situハイブリダイゼーション)により、THはDDCと同じように、脱皮期の黒色縞模様直下真皮細胞でmRNAの高発現、タンパク質の局在を確認することができた。またTHの酵素活性も黒色縞模様を有する背側でのみ、脱皮期において上昇していた。これは脱皮期における黒色縞模様直下真皮細胞のTHmRNA局所的高発現が、THタンパク質の局在を招き、その結果として酵素活性の上昇を引き起こしたと考えられる。これまでの結果から、黒色縞模様直下の真皮細胞では、TH・DDCが局所的に高発現することによって、それぞれの酵素活性の上昇を引き起こし、ドーパミン産生量を局所的に増加させていると考えられる。またTH・DDCの阻害剤をそれぞれ脱皮前の幼虫に注入すると、脱皮後の幼虫には黒色メラニンがまったく存在していなかった。このことからも、両者がメラニン合成経路においてキーエンザイムとして働いていることを証明できたのである。 以上のことから、THとDDCは同じ時期に同じ真皮細胞で発現の上昇が引き起こされていることが確認された。また、真皮細胞におけるDDCの発現は、GBP(growth blocking peptide)によって誘導されることがこれまでに報告されている。このことから、THもまたGBPによって発現を調節されているのではないかと考え、実験を行った。その結果、in vivo・in vitroの両実験系においても、GBPによってTHの発現は誘導された。このことから、脱皮期における体内のGBP濃度の変化が、TH・DDC発現のスイッチを押しているのかもしれない。このGBPによるTH・DDCの発現誘導を足掛かりに、TH・DDCの発現メカニズムの解明を行っていき、メラニン合成経路の上流部分の解明を進めていく。
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