2004 Fiscal Year Annual Research Report
明治期の国土利用と在来的経済発展:GISにみる近代流通ネットワークと市場圏の形成
Project/Area Number |
04J09590
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
鷲崎 俊太郎 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 徳川・明治期 / 在来的経済発展 / 宿場町 / 取手 / 人口移動 / 地代 / 家賃 / 歴史人口学 |
Research Abstract |
本研究は,今年度,(1)一次史料の収集,(2)歴史人口学のフォーマットに基づくそのデータベース化の2点に重点を置くとともに,徳川・明治期を通じて在来的経済発展が顕著だった関東地方の町場における地域経済と住環境との関係について検討してきた。 主要収集史料である下総国相馬郡取手宿本陣の染野修家文書(個人所蔵,一部は取手市埋蔵文化財センターに寄託)は,徳川・明治期を通じた地方文書である。本年度は,そのうち戸口関連史料1300点(主に「宗門人別改帳」・「五人組帳」・「人別送状」など)の閲覧,撮影を行った。 なかでも,染野家が家主として店子から毎月徴収する借地料・借家料を19世紀前半期の50年間記した「店地代金通帳」という史料の発見は,従来の近世日本経済史研究において地代や店賃の価格形成が明確にされなかった分,学界の発展に非常に貢献できたといえる。 この史料によれば,天明-天保期50年間の地代・店賃を米価で除した相対価格は,店子ごとに異なる動向を示すが,総じて寛政期:上昇,文化期:停滞,文政期:下落,天保期:上昇と推移し,文政期における1坪の店地代金は,天保期の江戸青山のそれを上回り,日本橋・京橋地区のそれに匹敵することが判明した。以上の結果は,町場の大都市に対する商業地としての重要性が江戸での都市問題の発生とともに上昇し,1830年代にはほぼ同等に位置付けられるとともに,文政インフレが賃借負担を緩和させ,町場の商業活動に大きく貢献したことを裏付けている。 上記の分析結果は,2005年度日本地理学会春季学術大会にて口頭発表した(「徳川後期宿場町の人口移動と借地借家料」,2005年3月28日,於青山学院大学)。続いて平成17年度中に,雑誌投稿を行う予定である。
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