2004 Fiscal Year Annual Research Report
市場支配的事業者による取引拒絶行為に対する経済法的規制の在り方
Project/Area Number |
04J09615
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Research Fellow |
川原 勝美 一橋大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 不可欠施設 / 反トラスト法 / 独占禁止法 / EC競争法 / GWB / 取引拒絶 |
Research Abstract |
近年、市場支配的事業者による取引拒絶行為の規制に関して、「不可欠施設」の法理と呼ばれる規制法理が注目を集め、我が国でも同法理の導入・立法化が検討されている。そこで16年度は、「不可欠施設」の法理が従来の規制法理との関係でどのような意義を有しているかという点に焦点を当てて研究を行うこととした。 具体的には、「不可欠施設」の法理の発祥の地である米国反トラスト法、1990年代初頭に同法理を導入し積極的な運用を行ってきたEC競争法、及び1996年GWB第6次改正の際に同法理を明文化し、着実に規制実務を積み重ねているドイツ法を取り上げて、各国の法規制の展開・特質について比較検討を行っている。 米国反トラスト法では、取引拒絶に対する規制基準として、「意図」基準・「独占のテコ」基準及び「不可欠施設」の法理が用いられている。そこで、これら三つの規制基準の成立・展開を確認し、各々の相互関係(共通点・相違点)を明らかにしている。 EC競争法では、「不可欠施設」の法理を導入する以前から取引拒絶に対する規制実務が積み重ねられており、このことから、同法理を導入すること自体の意義・必要性について議論がなされている。この点については、従来の規制基準で十分であるとして、「不可欠施設」の法理に独自の意義を認めない見解もある。一方で、規制領域の拡大及び義務の加重という点に「不可欠施設」の法理の意義を見い出す見解がある。また、ドイツ法でも、これと概ね同様の議論がなされている。 これに対して、我が国独占禁止法においては、審判決の展開がほとんど見られず、これまで取引拒絶の規制基準があまり明確なものとなっていなかった。この点に、米国法・EC法そしてドイツ法との決定的な違いがある。ただ、公正取引委員会によって示された一応の規制方針(ガイドライン)によれば、「不可欠施設」の法理に相当するような規制基準が既に存在していることが読み取れる。
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