2005 Fiscal Year Annual Research Report
契約関係維持の観点からみた情報提供義務-当事者が望まなかった契約の適正化-
Project/Area Number |
04J09616
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
有馬 奈菜 一橋大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 契約維持 / 情報提供義務 / 契約の適正化 / 契約締結過程 / 瑕疵担保責任 / 減額 / ドイツ法 / 説明義務 |
Research Abstract |
契約締結過程において瑕疵があった結果、当事者が望まなかった契約を締結した場合の保護について、契約関係からの離脱の観点から論じたものは数多くあるが、契約関係の維持の観点から論じたものは少ない。実際の紛争事例において契約関係の維持が求められているものが多いにもかかわらず、適切な解決がなされていないという現状に対し、解決策を提示するとともに法律上の根拠を明確にすることは実務上重要である。また、契約締結過程において瑕疵があった場合について、契約関係の維持という観点から研究することは理論的にも重要である。 17年度の研究ではこの問題について、外国法(特にドイツ法)の研究を中心として、契約関係の維持が求められている場合に当事者が望まなかった契約の適正化を図るためには情報提供義務(説明義務)の観念が重要な役割を果たすことを明らかにすることを目的とした。 その結果、契約前の情報提供義務違反による損害を算定する際に、不適切な情報提供により情報提供の相手方が期待した契約を考慮する視点と、情報提供の内容を全く考慮しないで客観的に判断するという視点が導き出された。さらに、情報提供義務の分類について、情報提供の対象に着目した分類(契約の価格に関するもの、契約の目的に関するもの、契約の目的の周辺事情に関するもの)と、情報提供の態様に着目した分類(誤情報提供、情報提供懈怠)が明らかになった。 情報提供の態様は損害賠償の範囲の算定と関連し、情報提供の対象は各既存の法制度との関連を考える際に有益な視点となる。 契約交渉過程で不適切な情報が提供され、情報提供の相手方が想定してなかった契約が成立した場合の契約の適正化において、様々な制度が関連してくる。当事者が契約関係の維持を求めている場合に、それらの制度では適切な解決がなされないこともあり、その際に情報提供義務概念を用いることによって、適切な解決がはかれるといえよう。
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