2005 Fiscal Year Annual Research Report
メディア研究による19世紀ロシア文学の大衆化過程の解明
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04J09891
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
神長 斉子 (大野 斉子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ロシア / 文化研究 / メディア / 出版 / 文学 / ゴーゴリ / イラストレーション / 異本論 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、平成17年度には北海道大学付属図書館にて研究課題に関連する研究書、19世紀ロシアの雑誌のマイクロフィッシュ、古書の調査・収集を行った。収集した資料をもとに、1880年代から1910年代におけるゴーゴリ作品の受容の研究を進めた。 また研究課題に関連するこれまでの研究を1840年代から1910年代までのゴーゴリ作品の異本の研究という形でまとめる作業を重点的に行った。この研究を異本の研究としてまとめたのは、作品の受容を論じるにあたって、読みの個別性と集団の変化の両方を視野に入れることが必要だと考えたからである。異本は個別の読み方や時代ごとの流行の産物である一方、それを異本群としてみたときには社会のシステムや、文学作品を介した集団的なコミュニケーションの変化を表すものである。 全体としてこの研究は文学作品がどのようにして社会に普及し、長い間に古典として定着したのか、そのプロセスとシステムを研究することを主要なテーマとするため、論を展開するための理論的な枠組みとしてシステム論を採用した。そしてゴーゴリ作品の異本が産出されるシステムや、受容の仕方の変化を軸としてテーマごとに三つに論を立て、それぞれに論考を行うこととした。 第一部では異本とは何かについて、一つの出版物を題材に詳細に論じることとした。第二部では、社会的な文脈による作品の読み方の変化と、それが後に受容の再生産に果たす役割について論じることとした。第三部では個別の文学作品が文化的遺産として構築される際に異本が果たす役割を論じることとした。 また現在の研究課題を通じたロシアの文化研究との関連で、18世紀末から19世紀初頭の文化研究の研究も進めている。今年度はエカテリーナ二世時代の宮廷文化に関して「女帝の身体」と題する論文を執筆した。これは『ロシア18世紀論集』第3号に掲載予定である。
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Research Products
(1 results)