2004 Fiscal Year Annual Research Report
推論的な言語理解の概念的枠組みを提示する学際的理論の構築
Project/Area Number |
04J09907
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅原 由起子 (川口 由起子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 会話の含み / 合理性 / 推論的言語理解 / 日常会話理解 / 理由 / グライス理論 / 非字義的意味 |
Research Abstract |
推論的言語理解の概念的枠組みを理論的に整理する準備として、予定どおり、人間の日常会話における言語理解に根拠を与える合理性の精緻化を行った。具体的には、合理性を基礎付けている「理由」概念の考察をすすめ、日常会話において受容される理由と受容されない理由があることを明らかにした。つまり、日常会話における聞き手は、たとえば、「発話者は〜であるので、・・・と発話した」と解釈し、〜部分を発話の理由、あるいは、発話の言外の意味(会話の含み)の内容として理解する。このような場合、理由は単独である発話を理解する理由として受け入れられることが可能であり、その理由は発話内容の言外の意味(会話の含み)として理解される。しかしながら、理由として受け入れられることが困難であるような、ある種の理由も存在する。後者の理由は、場合によっては受け入れ可能な場合もあるが、それは発話内容としてのみ受け入れ可能であり、発話解釈の理由としては不十分であることも予想された。この知見に基づき、現在は、以下の2点を研究中である。すなわち、前者と後者の理由の違いを何らかの形で形式化すること、そして、後者がさらに2つのカテゴリーに明確に区分されるべきかという問題に解答を与えることである。 なお、以上の知見を得るために、ヨーロッパおよび国内の学会・研究会に出席し、最新の研究成果を知るとともに、本研究で得られた理論的予想が妥当なものであるかどうか、非公式に意見を求めた。その結果、研究の方向性は妥当であることが明らかとなり、本研究の意義が再確認された。
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